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第1章 プロローグ
周りには夥しいほどの血と死体、いや屍体と言った方が確かかもしれない。
運良く生き残った僕はこの光景を二度と忘れる事は無いだろう。
僕は漠然と思う。
勇者とは、英雄とは何なのだろうか?
勇者とは勇気のある者を指す言葉か?
なら賊に立ち向かう村人は勇者か?
いや、そんな村人は愚か者だろうな…
英雄とは何だ?
ヒトを沢山、沢山殺し廻った。
それが英雄の所業だと言うならば僕はまさにそれだろう。
だけど僕には悪党にしか見えない。
それがどれだけ国のためになると言われてもそれを許容した時点でヒト殺しだ。
勇者とは、英語とは何なのだろう?
今日、僕が殺したあのヒトの家族は僕を恨むだろう。
「あぁ、漸くわかった。『それ』を認める事が英雄と呼ばれる事に値するのか…」
「なら、僕は英雄如きになりたくは無い。僕は…悪党でいい」
下を見ると死体で出来た山の上に僕は立っているような感じがした。
上を見ると祝福する様に星が瞬いていた。
そんな星を僕は少しだけ羨ましく思った。