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甘いもの

ちょっとだけ、食レポ文に挑戦してみました。

「叶、ここの英文上手く訳せないんだけど教えてくれない?」

「どれどれ。あーっとそこは……俺もよく分からんかったとこだな……」

「そっか、叶も分からなかったんだ」

「力になれなくて悪いな」

「分からないなら仕方ないよ。後で一緒に考えよ?」

「そうだな。そうするか」


「奏ちゃんと羽柴がまた二人の世界をつくってるようだよ、紗耶香さん」

「そうね、私たちもここにいるのに完全に二人でイチャついてるわね、渚さん」



「「イチャついてない!!!」」



 今俺たちは放課後の図書室に集まって明日の予習をしていた。


 元々俺と叶は授業に遅れないように一緒に予習をする約束をしていたのだが、そこにくだんの件で仲良くなった渚と紗耶香が加わることになって出来上がったのが今の状況だ。


「僕と叶を勝手に恋人同士にしないでよ」


 俺と叶はあくまでも親友同士だし、ビジュアルはともかく男同士で長い付き合いだから渚たちよりも質問しやすいだけだ。


「そんなこと言われてもね〜。私たちから見たらお二人さんの空気ただ甘よ?渚もそう思うでしょ?」

「そうだなぁ、だだ甘とまではいかなくても特別な雰囲気ってのは感じるね」


 親友同士ともなれば多少なりとも特別なものだと思うんだが…


「でも羽柴君は満更でもなそうよ?」

「え?」


 横を向けば叶が真顔で座っている。


「そうなの?」

「ソンナコトナイゾ。オレトカナデハシンユウデコイビトジャナイカラナ」


 なんかカタコトで後半は聞き取りずらくてよく分からなかったけど、前半で聞きたいことは聞けてるのでいいとしよう。


「ほらね?叶もそんなこと思ってないってさ」


 ちゃんと二人も聞いてるはずなので強気に出る。


「これは羽柴が少し可哀想だね」

「本当に気の毒よね」

「あれ?!どうしてそんな話に!??」

「「はあああ…………」」


 そんなため息つかないでもらえます?

 それに叶もなんかさっきからずっと同じ表情(真顔)のままなんだけど…




 ♢♢♢




 一悶着(ひともんちゃく)あったものの無事に明日の分の予習を終えるのことができた。


「あ〜やっと終わった……疲れた」

「僕も疲れたよ…」


 集中して勉強すると疲れるよな。これから更に内容が難しくなっていくと思うと少し憂鬱になる。


「じゃあさ、時間余ってるし私たちで甘味でも食べに行かないか?」


 疲れた頭にご褒美として糖分を与える。いいかも、行きたい。


「それ名案。私は賛成ね」

「僕も行きたいな」


 あとは叶が頷くだけだ。


「私たちってこの四人か?」

「もちろんだよ」

「行きたいのは山々だがこのメンツだとな…お前らには悪いけど」


 え、叶来ないの?そんな……


「羽柴」

「羽柴君」

「………わかったよ。俺も行く」


 叶も来るんだ!やったね!さあ、いざ甘味を求めて出発!


「……あれで恋仲を否定するんだから奏ちゃんはある意味すごいわよね」

「同感だよ」




 ♢♢♢




 渚に案内されてやってきたのは『天草庵』という和風喫茶だ。

 以前に何度か静流と来たことがあるがその時に食べたものはどれも美味しかったと記憶している。


「さて、何を食べようか。どれも美味しそうで目移りしてしまうね」

「私はこのわらび餅食べようかな」


 二人は慣れたように食べたいものを選んでいく。対して叶はメニューを見ているもののどこかそわそわしている。

 緊張している?どうして?


「そんなに緊張してどうしたの?」

「そりゃ女子が三人もいて男一人じゃ緊張もするだろ?」

「僕がいるよ?」


 俺と叶で男二人だってのにおかしなことを言うなあ。


「……お前は気楽でいいな」


 俺のいったいどこが気楽というのか。


「ほらほら二人とも。イチャついてないで早く頼むものを決めないか?」



「「イチャついてない!!!」」



「お客様、店内ではもう少しお静かにお願いします」

「「ごめんなさい」」


 店員さんに注意されてしまったじゃないか…


 その後すぐに皆食べたいものを決めて注文した。暫くして全員分が運ばれてくる。


「どれも美味しそうだね」


 運ばれてきたもの全部綺麗に盛られていて、見るだけで甘みを感じそうだ。


「全部食べたくなるわね。太るからそんなことしないけど…」

「ははは。とりあえずやることはやっておこう」


「「「「いただきます」」」」


 そして皆一斉に食べ始める。


「美味しいっ!やっぱりわらび餅にきな粉の組み合わせは最高ね!」

「この抹茶ロールもすごく美味しいよ」


 二人ともそれぞれが注文したものにかなり満足してるようだ。

 俺が頼んだのは旬の果物をふんだんに盛った餡蜜。季節限定メニューで、写真を見た瞬間にこれを食べると決めていた。


 スプーンですくい口に運ぶ。


 口の中に広がっていく甘み。この優しい甘さには自然と顔が綻んでしまう。しかしそれだけにとどまらず、果物の酸味がこの餡蜜にメリハリを出している。寒天の噛めば解けていくような食感も食べる楽しさをより一層強めている。


「美味しいなぁ……」

「奏ちゃんがすごく幸せそうな顔してるよ」

「見てる私たちも幸せになりそうな笑顔ね」


 ああ、しあわせ〜〜〜。

 そういえば叶のぜんざいもおいしそうだなぁ。食べたいなぁ。


「ん?こっち見てどうした?」

「ぜんざい美味しそうだなぁって」

「そうゆうことな。ほらよ」


 叶がぜんざいをスプーンですくい俺の目の前に突き出してくる。ぜんざいを分けてくれるようだ。


「ありがと!……はむっ。餡子と餅はいいよぉ」

「美味しいそうでなにより」


 叶がぜんざいを分けてくれたし俺も餡蜜を少し分けてあげようかな。


「叶、僕のも少しあげるよ。ほら」

「じゃ遠慮なく。……おお、これは美味しいな」


 叶も喜んでくれてよかったな。



「渚、私もう目の前の甘さでわらび餅いらないかも…」

「それは私も思ったけど、残すわけにはいかないからね。ちゃんと食べよう…」




 ♢♢♢




 俺たちは皆が食べ終えたらすぐに会計をして店をでた。


「あー、美味しかった!もう満足!」

「そうだな。なんだかんだついてきて正解だったぜ」

「私たちは甘味以外でも満足よ……」

「ははは…本当にそうだね」


 渚と紗耶香がどこかげんなりしてる気がするけど、笑っているので気のせいだろう。


「渚、紗耶香、また明日〜」

「じゃあな」


 俺と叶、渚と紗耶香で帰る方向が違うのでここでお別れだ。


「また明日ね」

「バイバイ。また明日」


 俺たちはそれぞれの帰り道に向かって歩き出した。


 今日も楽しく過ごせてよかった。また四人で食べに来たいと思う。





こんなに奏と叶がイチャつく回になるなんて…

それともこれが普通???

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