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クリスマスとかいう日③

 夕刻、玄関からチャイム音が鳴る。どうやら叶たちが来たようだ。渚たちから逃げるように急いで玄関まで行き、その鍵を開けた。


「いらっしゃーい!」

「よお、お邪魔しま……お前、どうしてそんな格好してるんだ」

「え?」


 そう言われて、自分の服装を見てみると赤と白で彩られた鮮やかな服装。そう、サンタ服のままなのだ。


「え、あっ、いや、これは…その……」


 あの二人にもみくちゃにされてる間に着替えるのをウッカリ忘れていた。結局、見せる勇気が湧かなかったから見せるつもりなかったのに……

 後で二人には―――


「うん、似合ってるぞ。可愛い」

「ほへ?」


 え、え?ええええ???い、今、なななななんて言った?ききき聞き間違い?うん、そうだ。叶がか、かわいい………なんてさらっと言うわけないし!!!?


「どうした?急に挙動不審になって」

「な、なんでもない!」


 何もなかったかの様に接してくる叶。一体、誰のせいで……ちょっとムカつく。


「本当か?なんでもなさそうには見えなかったが」

「なんでもないったらないよ!」

「わかった、わかったから落ち着けって」


 笑いながら叶は僕を落ち着かせようとしてくる。

 最初から落ち着いてるし?叶から不意打ち気味に褒められたから舞い上がったわけじゃないし?むしろ、有り得ないし?


「なあ、いつまで見せつけられればいい?そろそろ中に入りたいんだけど」



「「あ」」



 不意に聞こえた声の主は叶と一緒にやってきた牧谷君。視界には入っていたはずなのにすっかり頭から抜けて落ちていた。

 ごめんよ………





 ♢♢♢




 とりあえず、無事全員が集まった。これからパーティの用意する、するんだけど―――


「奥さん、あの二人ね、私を家の中に入れることもせずに玄関で二人の世界作ってたのよ?外で待ちぼうけよ。寒かったわぁ〜」

「お気の毒ね〜。けれど、あの二人じゃ仕方ないわよっ」

「これからの動きに注目だ……しま、しょ?」


 ―――と、まあ、しばらくこんな調子でひそひそ(してる風なだけで丸聞こえだけど)しながらこちらに視線を飛ばしてくる。


「ご、ごめんて!悪気はなかったんだよ!」

「俺らが悪かった、だからそれやめてください。まじでお願いします」


 お互いにやってしまった感があるのでとにかく謝る。このまま生暖かい目で見られるのは非常に居心地が悪い。


「牧谷の奥さん、二人はこう言ってるけどどうかしら」

「反省はしてるみたいだし許してあげようかしら?」


 ふぅ、何とか許してもらえそうだ。あのまま進行していったらとてもじゃないが耐えられない。


「代わりに奏ちゃんには、あのまま(サンタ服)でいてもらお……いましょ?」

「「それよ(だ)!」」


 な、渚!?余計なことを……

 というか渚、さっきからちょいちょい役になりきれてないよ?素が漏れてるから。


 という訳で、()()()がサンタ服を着てパーティの準備が始まった。俺だけなのは渚と沙耶香は部屋に戻った時、既に着替えて元の服装に戻っていたのだ。二人とも着替えるのが早すぎるよ……

 そして何故か叶には罰がないときた。どうして。解せぬ……




 ♢♢♢




 およそ1時間後、何事もなくパーティの準備は完了した。

 オーブンから黒い煙が出たり、俺の方に包丁が飛んできたりと何か色々起きた気がするけどきっと気のせい。

 気のせいったら気のせいなのだ。


「ぶ、無事?無事!準備が終わったので乾杯の用意!」


 疑問形になってしまうのも仕方ないと思う。うん。

 音頭を取っているのはもちろん、渚。本当に良く似合う。軽く首を動かし、皆が手にジョッキ(中身はもちろんジュース)を持っているかを確認している。


「よし、ではいくよ!」


 一斉にジョッキを勢いよく掲げる。


「メリークリスマス!」



「「「「メリークリスマス!!!!」」」」





 ♢♢♢




 クリスマスパーティは今度は本当に無事に終わった。

 今は叶と二人で最後の後片付けをしている。三人には先に帰ってもらった。一応、お客様だからね。叶にも帰っていいって言ったんだけど、最後まで手伝ってくれるらしい。

 ちょっと嬉しいかな。えへへ。


 特に何かを話すわけでもなく、片付けは淡々と進んだ。

 最後の皿を乾燥機にいれ〜てっと、これで終了。あー、疲れた。


「お疲れ様」

「ん、お疲れ様。手伝ってくれてありがとうね」

「いいって、俺とお前の仲だろ?」

「たしかに」


 少し笑って、一緒に玄関に向かう。叶の動きがどこかぎこちない気がする。気のせいだろうけど。

 そのまま静かに玄関にたどり着く。


「じゃ、またね」

「………」


 扉に手をかけて固まる叶。何か忘れ物でもしたのだろうか。


「奏、ちょっと手出してくれ」

「うん?」


 忘れ物では無いらしい。言われたままに叶の方へと手を差し出す。何かな?


「……これ、やるよ」


 叶が取り出したのはやや小さめの箱。とても丁寧に包装されている。


「俺からのクリスマスプレゼント」


 俺の手のひらにポスッと優しく箱を置いた。あまりに突然で言葉が出てこない。


「中身は昨日、奏が見てた髪飾りだ。あまりに欲しそうにしてたからな」

「えっ、あれ買ったの!?高かったのに!!?」


 驚いて箱を落としかける。あ、危なかったよ…


「おいおい、落とすなよ?せっかくのクリスマスプレゼントなんだからな」


 これには叶も苦笑い。ごめんて。


「いや、でもいいの?僕、叶に何も用意してないよ?」



「いいんだよ。俺がお前にあげたかったんだ」



 その瞳の奥にどんな感情が秘められているのか、僕には分からない。分からないけど、僕の胸が微かに高鳴るのを確かに感じた。


「そっか。ありがとう、叶」


 せめて感謝の気持ちが伝わるようにと笑顔でお礼を言った。


「なあ、せっかくだからさ、ここでそれ付けてくれないか?」


 叶からのお願いだ。断るわけが無い。


「いいよ。待ってて」


 包装がぐしゃぐしゃにならないように慎重に解く。中には黒いケース。ゴクリと喉が鳴る。中身が分かっていても、とても緊張する。


 ケースをゆっくり、ことさらゆっくり開く。


 現れたのは雪結晶(あの時)の髪飾り。改めて見ても綺麗だと思う。でも、全然違う。とてもキラキラしている。デパート(あのそこ)で見たときよりも輝きが遥かに上なのだ。


 壊れないようにそっと髪飾りを取り出す。このままずっと見ていられるような気がするがそういう訳にもいかない。

 どこに付けるか悩みつつ、とりあえず顔の左上辺りに付けることにした。


「よし、これでどう―――」


 額に何かが触れる。柔らかいけれどちょっと硬い何か。

 目線を正面に向けるといつの間にか近くにいた叶の顔。その顔はとても赤い。


「に、似合ってる。凄く、似合って、る……じゃあな」


 それだけ言い残して、走り去っていった。


「え?」


 思考が纏まらないまま足から力が抜け、その場に座りこむ。


「……え?」


 冷たい空気に晒されているはずの顔。それなのに、額から熱が広がり顔がとても熱い。きっと今の僕の顔は真っ赤だ。




話の構成が下手で泣きそうです。


ちなみに久留井家の他の面々はそれぞれ別の場所でクリスマスを満喫してます!

妹:友達の家

母:ママ友と外食

父:同僚と会社

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