クリスマスとかいう日①
書かないと書けないものですね……言葉が出てこない。
ペースあげていきたいところ。
「むむむ……悩む、とても悩む」
すぐそばにあった髭付きメガネと色物マスクを適当に手に取ってみる。色物枠としてならありかな?
「なしだ、な・し。戻しとけ。それを貰っても誰も得しないからな?」
「そうだね」
後ろからの声に従いそっと元の場所に戻す。たしかにこんなの貰ったところで置き所に困るし邪魔なだけよね。うん、まともなものにしておこう。助言ありがとう。
「早く決めろよな?俺はもう決めて買ってきたぞ」
「叶が早すぎるんだよ」
こういうのって時間かかって当然だと思うんだよね。変なもの貰ったんじゃ相手が可哀そうだし。え?それなら何でさっき髭付きメガネとか色物マスクを選ぼうとしてたのかって?……疲れてたんだよ、うん。そうに決まってる。
「早すぎるて言うけどな、もう二時間だぞ…」
「………」
も、もうそんなに経ってたんだ…まだ一時間経つかどうかだと思ってたのに。最近は買い物してると時間が経つのが早く感じるなぁ。
「俺も手伝うから決めてしまおうぜ」
「ありがとう。叶のセンスに期待しなきゃ」
「げっ!そんなにプレッシャーかけるなよ!」
というわけで今日は12月23日、クリスマス・イブ前日。明日開かれるクリスマスパーティーでのプレゼント交換の品を叶と探しに来ている。
♢♢♢
結局あれからさらに一時間、叶の協力のおかげで何とか納得できるものが見つかった。………見る手が止まらないんですよ。
「や、やっとか………」
「うん、ありがとね」
叶がいてくれなかったらもっと時間かかったかもなぁ。長く付き合ってもらったし本当に感謝しなくちゃね。持つべきものは叶!一家に一台の叶!……それはちょっと気持ち悪いや。
「喜んでもらえたなら探した甲斐があるってもんだな」
「叶はいつも頼りになるよね」
「そうだろうそうだろう!もっと頼ってくれてもいいんだぜ?」
くっ、なんて良い奴なんだ。今までも結構頼ってたのにもっと頼りたくなってしまうじゃないか!!!
「叶…君は良い奴だよ」
叶の手を取り、先程購入したプレゼントの入ったレジ袋を腕にかけた。これでよし。
「さて、時間はまだあるけどどうする?」
「………」
あれ?なんで動かないで固まってるの?あんまり重いものじゃないと思うんだけど。
「かなた〜?大丈夫?」
「……れの………………じゃない」
「え?なんて?聞こえない」
ごにょごにょ言ってて聞き取れない。はっきり言わないと分からないよ?
「俺の思ってた頼られ方じゃないんだが!?」
え、あ、そういう?
「もっと頼っていいって言ったじゃん」
「言っけどな!?もっと、こう……なんて言うか…な?わかってくれよ!」
なるほど、言葉にしづらいけど言いたいことは何となくわかった。持ってもらえたら楽でよかったけど、そういう事なら仕方ないかな。
「ごめんね、やっぱり自分で持つよ」
自分で持つべく袋に手を伸ばす。が、
―――スカッ
叶の腕がサッと動き、手は袋のあった場所で空気を掴んだ。
あれ?
「叶、意地悪しないでいいから袋渡して」
「いや、やっぱり俺が持つ」
「は?」
コイツ何言ってるの?持つのが嫌なんじゃないの?こんな頼られ方したくなかったんじゃないの?
「ほら、叶」
「いいから気にするな。また何か見るんだろ?ほらほら時間無くなる前にまで回ろうぜ」
「……わかった。ありがとう」
持つのか持たないのかはっきりして欲しい。結果として持ってもらえて有難いんだけど、なんか釈然としない。実は情緒不安定なの?
「好きな奴に荷物持たせるなんて出来るわけねぇ」
「え?なんて?」
「なんでもない」
後ろから聞こえた囁き声はやはり小さくてよくわからなかった。もっとハッキリと喋ってよ……
♢♢♢
「もう時間だし帰ろうか」
「そうだな」
近くにかかっていた時計は五時を過ぎていて窓から投射された光は床が燃えてるかのように真っ赤に染めあげている。早いなあ。
「……冬って日が落ちるの早いから少し嫌だな」
「そうか?」
「父さんと母さんが早く帰ってこいって言うから。僕は暗くなっても遊びたいんだけどね」
「なるほどな。まあ、今の状態じゃ仕方ないわな」
どうでもいいような話を続けながら出口へ向かう。叶の方に顔を向けて。だから偶然それが目に入った。
「あっ…」
「ん?おい、どうした」
叶の声を聞き流しながら吸い込まれるようにそれに歩み寄った。
「凄い……いいなぁ」
それは雪の結晶をモチーフにしたものでとても精緻に造らている。それも複数。それでサイズもちょっと大きいけれど、華美でなく透き通った雪の結晶を彩るワンポイントとして付けられている球の存在もあってすごく綺麗。これは欲し―――
「そちらは今日入荷したばかりの新商品なんですよ。お客様は見る目がありますね。きっとお似合いですよ」
え、嘘、眺めてるの見られた?は、恥ずかしい!!!
今までこういうことがなかったから頭の中はプチパニック状態。
「え、あっ、その………だ、大丈夫ですっ!!!」
声をかけてくれた店員さんから脱兎のごとく離れて叶の元まで駆け寄った。
「さっさっ!帰ろ帰ろ!」
「ちょっ、どうした急に!引っ張るな!服が伸びる!」
早く帰ろう。それ以外のことが考えられないくらいには恥ずかしいかった。
〜出口前〜
叶「俺トイレ行ってくる」
奏「え、そっち行くよりも……速い」




