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楽しみの後に

あ、あれ?前の更新から1ヶ月も経ってるの?

………お待たせしました

 カリカリカリカリ、グシグシ、カリ、カリカリ


 学園祭が終わってからしばらく経って定期テスト来週に差し迫った土曜日の午後、俺は机に並べられた問題集やノートとにらめっこをしていた。


「この式をどうにかして変形させればいいんだろうけど………」


 解法が全く思い浮かばず、一度問題と出来た部分までを読みあげてみたけど結局なにも閃くことはなかった。

 問題を睨みつけるがごとく見つめていてももちろんなにも降りてこない。完全に手詰まりだ。

 仕方ないからちょっと休憩がてらに目の前で百面相してる人物に聞いてみるとしよう。


「かなたぁ〜……この問題偶然解けました!ってことない?」


 そう、今日は一人黙々とテスト勉強……ってことはなく叶も一緒にテスト勉強をしている。二人でしようと言われて断る理由も特にないので承諾した次第だ。


「『偶然』って酷くないか?まあ、解けてるわけじゃないんだけどな」


 やっぱり解けてなかったか。まあ、予想通りかな。


「何となく分かってたからいいよ。ちょっと息抜きに意地悪してみようと思っただけで」

「やっぱひでぇな……」


 叶が困ったような顔をする。これはからかった甲斐が有るというもの。おかげでスッキリした。悪いなぁとは思うけど。ほんのちょっとだけ。


「むしろ俺がお前に聞きたいくらいなんだけど。なあ、ここどうやって解くんだ?」

「どれどれ?ええっと……これは………これとこの数字を使って――」


 こんな感じで偶に互いに教え合っ……教え、おしえ………………教え合いながら勉強していった。


 変な間があったって?気にしてはいけない。うん。






 ♢♢♢






 休憩を何度か挟みつつ時間が静かに過ぎていく。帰る時間を告げるチャイムがなってから随分と時間が経った頃、パタッとノートを閉じる。


「ん、んんーーーーー!!!………はあぁ」


 一区切りついたので勉強で凝り固まった体をほぐす。結構集中できたかな?


「僕は終わるけど、叶は?」

「俺はもう少しだけ」

「そう。じゃあお茶取ってくるけど、欲しいよね?」

「ああ、頼む」

「了解」


 叶が真剣に勉強に取り組んでいる様子をちょっと眺めて、部屋を出た。


 台所に行けば母さんが夕食の準備をしていた。その様子を見て今日は一緒に夕食の料理作るって約束してたことを思い出す。


「ごめん、母さん!忘れてた。ちょっと待ってね!」


 急いでお茶を持っていこうと少しあたふたしていたところ、


「今日は叶君が来てるからいいわよ。また今度しましょ?」


 と、料理免除の許可が。慌てずに済んだので、少しホッとする。


「そう?わかった。ありがとう」


 周りを見る余裕ができると、いつもよりも皿の枚数が一枚多くになってることに気がついた。料理の量も多くなってるように見える。


「皿一枚多いんじゃない?片付けておけばいい?」

「あ、それは叶君の分。食べていきなさいって伝えといてくれるかしら」

「わかったよ」


 手に持ったお茶とコップを持ち直す。台所を出るすんでのところで母さんに呼び止められた。


「なに?」

「どうせなら今日は叶君に泊まっていってもらえばと思ったの。明日は日曜日だしいいんじゃない?」

「え?」


 突然の提案に驚く。謎にドキドキしてしまっている。


「驚くことないでしょう?昨年までよくしてたじゃない」


 そう冷静に言われて落ち着きを取り戻す。確かに昨年までよくしてたことなのになんでこうも落ち着かなくなったのかな?ちょっと不思議。


「叶、泊まる為のものは持ってきてないと思うけど一度帰らせるの?」

「必要なのって精々寝間着くらいでしょ?それなら奏が前に着てた服まだあるからそれを着てもらえればわざわざ帰らなくても大丈夫よ」

「なるほど」


 あと、母さんのことだから大丈夫だとは思うけど、確認はしなくては。


「叶の家からは許可とったの?」

「もちろんよ」

「じゃあ聞いておくね」


 流石に二度目の呼び止めがあることなく部屋に戻ることができた。






 ♢♢♢






 部屋の戸を開けて入るとちょっと慌てて元に戻った感じで叶がくつろいだ姿勢でいる。怪しい。


「お、おかえり。遅かったな」

「母さんと話してたんだ」


 一呼吸おき、よそよそしい態度の叶を問いただす。


「で、何してたの?」

「何もしてないぞ?」


 叶は体を硬直させ、目が泳がせる。そして、その視線の先には俺のベッド。あそこで何かしたのは間違いない。

 何かやらかした時は必ずその方向を見てしまっているのでわかりやすい。


「ふ〜ん、本当に?」

「本当だ!」


 シラを切りますか。何バレたくないことしたのやら。


「本当の本当に?」

「本当の本当の本当だ!」


 そのまま睨み合うことしばらく、今回は俺が折れることにした。何かしてたのは確定的だけど、特に荒らされてる様子もないのでこれ以上の問答は時間の無駄な気がするし。


「はあ……信じるからね?」

「ありがとうございます!」


 調子の良い奴め。…さて、とりあえず本題に入らなくては。


「それはそれとして、母さんが夕食食べていけってさ」

「おっ、それは嬉しいな」


 本当に嬉しそうに笑うなあ。さっきまでの顔とは雲泥の差。切り替えが早いのはいい事なんだけどね。


「そ、それと…さ………」


 ううう……なんてことないはずなのに無駄に緊張してしまう。こんな姿になって初めてだからだと思いたい。


「今日はこのまま泊まっていかない?久しぶりに、ね」

「……何も持ってきてないぞ?」

「服は僕のあるからそれ着ればいいって。あと、寝泊まりの許可は既に取ってるよ」

「そうか……でも、お前の服じゃサイズ合わなくないか?というか絶対合わないよな」


 去年(男の時)まではそんなに差はなかったから絶対合わないってことはないと思うんだけど………もしかして今の俺の服と勘違いしてる?


「叶が着るのは僕が去年着てたやつだからね?まさか、『今の僕の服を着る』なんて考えてたわけじゃないよね?」


 しばしの沈黙、あっと声を漏らし顔を赤くさせていく。


「そ、そんなわけないだろ!?ジョークだよ!ジョーク!!!」


 と早口でまくしたてる。この様子を見るとやっぱり勘違いしてたんだなあって。ちょっとおかしくて笑ってしまった。


「笑うことないだろ……」

「ふふ、ごめんごめん」


 ひと笑いしたところで叶が更なる疑問を投げかけてくる。


「そういえばさあ、俺どこで寝るの?この部屋?」

「それは今までがそうだったから……そう、なん、じゃ………」

「「・・・・・」」


 そ、そうだった。今までは一緒に寝てたじゃん。やばい、恥ずかしいかも……うう、でも本当にどうしちゃんだんだろ………



 結局、母さんにご飯で呼ばれるまでこの気まずい空気は続いた。







台風で今日だけでなく明日も酷いらしいので、皆さん気をつけて過ごしてくださいね?


では、良い土日を。あ、月曜日も休みの日でしたっけ…

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