音桜金祭 ④
週一投稿ってなんでしたっけ()
(待ってくれてる人、度々遅れてごめんなさい)
空に浮かぶ太陽は照り輝き、そのまわりを純白の雲がたゆたっている。そんな気持ちのいい天気で迎える最終日。早いうちにメイド仕事を終えて、今日も叶と二人であちらこちらを歩き回ることにした。
「なんで渚たちは別行動しよって言い出したんだろうね?」
「他の女友達と回るって言ってただろ」
俺のふと零した疑問に叶が答える。さも当然のように。でも、
「牧谷くんも同じような理由でいないんだよ?前から約束してたのにね。何か隠してるのかな?」
「………どうだろうな。俺は知らないとしか言えないな。どうしてそう思うんだ?」
何か知って隠してる、そんな気配を叶からありありと感じる。でも言いそうにない。話したくないことは頑なに話さない、そういう奴だ。
それを思うとモヤモヤした気分になる。
だから八つ当たり気味に言ってみたかった言葉で驚かせてみようかなと思う。……驚くか分からないけど。
「勘だよ、勘。お・ん・なの勘」
「……え?」
鳩が鉄砲を食らったような顔で固まる叶。結構面白い顔をしてる。俺がこんなこと言うなんて思ってもみなかったのだろう。この顔を見れてスッキリした。これで何か隠してることは不問にしてあげよう。
「なーんてね?冗談だよ、冗談」
「………………冗談?」
まだ思考がまとまってないのかな?キョトンとした顔のままだ。見てると愛嬌があって可愛いのでは思ってしまう。
「そうそう。きっとみんな今頃楽しんでるだろうから一緒に楽しもう?」
「……あ、ああ。そうだな」
ちょっと足早に歩く。後ろから「焦った…」という声が聞こえたのも気づいてないことにしてあげる。
♢♢♢
昼も近かったので食べたいものを購入して座って食べれる場所を探して昼食をとることにした。
「ふ〜、ちょっと早めのお昼タイム」
「俺はもう腹が早く飯よこせって言ってる状態だけどな」
そのタイミングで叶のお腹が鳴る。喋ってないで早くくれと急かしてるようで笑ってしまう。
「はははは……そうみたいだね。早く食べよっか」
「おう……」
食べながらブログラムを見てこの後の予定をたてる。うーん、どれも面白そうなんだけど、同じ時間にあるからなあ。
「何に行く?」
「そうだな……とりあえずは武也が校内カラオケ大会に出るって言ってたからそれでも見に行くか」
「了解」
食べる量が半分より少なくなった頃に叶がチラチラとこちらの食べ物を見ていることに気がついた。叶の容器を見れば全て空になっている。まだ、食べたいのか。
「さっきから目線が僕の手元にきてるけど、食べたいの?」
「あ、いや、そうだけど、そうじゃなくて……」
ハッキリしないやつ。何を言いたいのか分からない。
「何?いらないの?」
「た、食べる!」
「素直でよろしい。はい、どうぞ」
俺の残りを叶に手渡す。正直、余りそうだったから助かった。
「………食べさせて欲しかったんだけどな」
…………い、今なんて言った?『食べさせて欲しい』って言った?血迷ったの?それとも聞き間違い?
「……今何て言った?よく聞こえなかったんだけど」
「何か言ったつもりは無いんだが……俺何か言ってたか?」
これは本気で分かってなさそう。ならきっと聞き間違いなんだろう。うん、そうに違いない。
「いや、何も言ってないならいいよ。うん。」
「そうか」
そう言って黙々と俺の残りを食べ始めた。しばらく何とも言えない空気が流れていた。
♢♢♢
とりあえず牧谷君の出るカラオケ大会を聞きに小体育館に向かう。着く頃には気まずい空気は霧散していた。
「牧谷くんはいつ頃出番なの?」
比較的ステージに近いところを陣取り、叶に尋ねる。
「割と後みたいらしいぞ。順番来るまでゆっくり他の奴らの見てようぜ」
「そうだね」
少し待って、カラオケ大会が始まった。一人目はお世辞にも上手いとは言えなかったものの聞けば気分が乗ってくる曲で周りからの合いの手もあって序盤からの盛り上がりは上々だった。
二人目は対照的に結構上手かったので皆聞き入っていて、曲が終わると共に大きな拍手が響いた。
一口にカラオケ大会と言ってもその上手さを競って順位付けをするわけではないので出場者それぞれが思い思いにこの文化祭を楽しもうとしてるのが感じ取れる。
叶と感想を言い合ってるうちに、とうとう牧谷君の番を次に控えていた。
「次だね」
「そうだな。あいつは何歌ってくれるのか楽しみだ」
叶がポケットからスマホを取り出し、ステージにそのスマホを向ける。撮影するらしい。
「武也の勇姿をメモリーに収めといてやろうと思ってな」
俺の視線に気づいてその理由を答えてくれた。後で皆で視聴してネタにする予定もあるらしい。
『それでは牧谷ズ、お願いします』
ん?牧谷ズ?一人で出るんじゃないんだ。……思考出来たのはここまで。止まるしかなかった。それほどまでに圧倒的な視界の暴力が体育館の喧騒を奪い去る。
登場したのは牧谷君と図体のでかい男子生徒が四人。完全にサイズの合っていないフリフリの女性アイドル衣装を着て並んでいる。厚い胸板が浮きでており今にも服が弾けそうだ。その似合わなさは体育祭の借り物競走のコスプレを超越している。
不意にCMで聞いたことがある曲が流れる。同時に五人は動き出しダンスを始めた。動きにはまったく淀みがなく上手いと言わざるを得ない。さらには歌も上手く、完成度の高いものだった。
故に――――
《何故その選曲、その衣装になってしまった!?》
俺自身が素直に思い、この場の全員がそう思ってる自信がある。
彼らがアイドルをしている間はひたすらに観客側は静かだった。邪魔しないようにというような善意の静けさではなく、困惑・思考放棄による静けさだろう。
彼らがフィニッシュを決めた直後は誰も動けず、物音ひとつしなかった。幾ばくか間を置いて大拍手が起こった。音にどことなくぎこちなさはあったけど。
横を見れば叶のスマホは録画モードに切り替えられてから一向に仕事することなくステージを去る彼らを写していた。
♢♢♢
叶が放心状態から回復してからは大体育館での演劇をみたり、生徒製縁日で遊んだりして楽しんで、音桜金祭最終日を終えた。
片付けの後、楽しさの余韻に浸りながら二人で帰り道を歩く。恵海ちゃんは仕事が残ってるらしく、先に帰ることにしたのだ。
「なんだかんだ満喫しちゃったね」
「ああ、満喫したな」
最初は渚達のドタキャンにちょっとムッとしたけど結局は叶と楽しんでしまった。今までがそうだったから二人で楽しめない訳がないんだけどね。
「今年は渚たちも一緒に回ると思ったら結局叶と二人っきりで今までと変わらなかったね。もしかすると、これからもず〜っと二人だけで一緒にこういことしちゃったりして」
祭りの熱に浮かされて言った言葉。冗談めかして言った言葉。何気なく言った言葉。特に深い意味など何も無い。
けれど、
「そうだな。ずっと……ずっとお前とこうしていられたらと思うよ」
きっとこれも熱に浮かされた言葉だったんだと思う。ただその目は、俺を写しているであろう瞳は、とても真剣に見えた。
いつも予約投稿したつもりになって失敗してる雑魚ですどうも。成功した回数の方が少ないような……確認ミスでしかないんですけどね()
…………今日も予約投稿のつもりなんですけどまさか失敗してませんよね?まさかね?




