音桜金祭 ①
はい、様子を見に来たら投稿日がズレてることに気がついてこんな時間に。待ってた人いたらごめんなさい。
ついに迎えた音桜金祭初日。空は雲ひとつない晴天で、澄んだ青色が心を軽やかにしてくれる。空気もいい感じに乾いていてまさに運動日和。
待ちに待った学園祭でどこもかしこも騒がしい声で溢れている。そのせいなのか、遠目から学校を眺めた時には学校が躍動しているかのように見えた。案外お祭り好きなのかもしれない。
「よっし、張り切っていくか」
そう言ってしきりに体を動かす叶。出番に向けて準備運動でもしているのだろうけど、叶の出る騎馬戦は午前最後の種目なので準備にしては少々というかかなり早い。
「なんでそんなに体動かしてるの?」
「ん?いや、どうも落ち着かなくてな」
「そんなものかなあ」
テンションが上がってソワソワしてるって思えばそれまでかもしれない。でも、去年のテンションも高かったけど、今年はそれに輪をかけて高い。何かあったのかな?
「男の子がいつも以上に張り切るなんて好きな子に良いとこ見せるために決まってるじゃないか」
「そうそう」
そう言ってやって来たのは渚と沙耶香。あまりにも自然に会話に入ってきて言うから軽く流してしまいそうだったけど、そうはいかない。
「えっ、叶好きな子がいるの!?」
「うぐっ」
うん、この反応は当たりかな?去年はそんな素振りなんてなかったから今年からだったりして。隠してたってことも有り得るけど。
「わ、悪いかよ…」
顔を赤くし、少し拗ねたように答える様子はすこし可愛げがある。
「べつに〜?でも教えてくれてもよかったのに。親友でしょ?ね?」
「………だから言えないんだよ」
親友だから言えないって、どちらかというと親友だから教えるけどって展開じゃないの?嫌みたいだから無理に追及することはないけれども。
「いや、奏ちゃんそれは可哀想だよ」
「天然は時に罪ね」
「これは苦労するな」
「むう……」
皆して言わなくても……というか、いつの間にか牧谷君も混ざってるし。今日はそういう日なの?
しかし、叶の好きな人か……誰なんだろ?渚か沙耶香ってことは無さそうだし、俺の知らない子なのかな?よし、俺の知る限りの叶の好みから推測してみよう。
身長はどちらかと言えば低め。顔は可愛い系。胸は巨乳派……………なんだろう非常にムカムカしてきた。
こんなことにって思うけど、自分でも気づかなかっただけで話してくれなかったことがショックだった?見た感じ渚達は分かってる風だったし。俺だけ知らないのは癪だけど、ここは大きな心で報告を待つとしよう。
にやけた顔で彼女を紹介してくる姿を想像するとどうしようもなく悲しく思えた。
♢♢♢
去年以上に激しい盛り上がりを見せつつも目立った怪我人もおらず、順調にプログラムは進み午前最後の種目騎馬戦。毎年盛り上がって人気のある競技の一つ。また順位ごとの配点の差は大きいので、一位になれば優勝は大きく近づく。叶はもちろん、ほかの競技者も気合十分に見える。
「よっしゃ、行ってくるわ。活躍してくるから見とけよ」
「うん、頑張ってね」
「応援もよろしくな」
「任せてよ」
手を振り、所定の位置まで駆けて行った。怪我しないかちょっと心配。
「そんなに心配そうにしなくても大丈夫だよ」
「そうそう、羽柴くんはそんなヘマしないわよ」
渚達はそう言ってくれるけど、心配なものは心配なんだよね。というより……
「そんなに顔に出てる?」
「「出てる」」
二人同時に言うほどですか。そうですか。……前にも言われたけどピンと来ないや。
「まあ、とりあえず応援してあげない?ほら」
沙耶香が指をさした先で既に騎馬を組み競技開始の合図を待っている。遠いけどワクワクしている叶の横顔が見える。心配なのは変わらないけど、とても応援してあげたい。
「そうだね。それに応援するって言ったしね」
開始の笛が鳴る。俺は声が少しでも叶に届くようにと一生懸命に声を張って応援を始めた。
♢♢♢
盛り上がった騎馬戦も先程終わり、今はお昼休憩。場所を移して皆でご飯を食べていた。
「いや〜、惜しかったね。あと少しで一位だったのに」
「二位でもいいじゃない」
「そうだよ。叶も牧谷君もお疲れ様」
「おう」
「ありがとう」
さっきの騎馬戦のことをメインに午前中の体育祭を振り返りながらそれぞれ弁当をつつく。弁当の中身は今日という日に合わせてか肉が多めみたい。疲れた体が肉を欲しているのか皆ものすごいスピードで食べている。食べてる様子は幸せそうなのでこっちもほっこりしてしまう。
「ふう……食べた食べた。これで午後は頑張って応援に専念できるぜ」
叶の言葉に俺以外の全員が頷く。沙耶香も渚も午前中のうちに競技にでて出番は終わっている。午後の種目に出るのは俺だけで、四人は応援をして午後を過ごすことになる。
「そうそう、応援といえば私たちの応援は聞こえてたかしら?」
沙耶香は笑顔で二人に尋ねる。とってもいい笑顔だ。
「皆が応援してくれてるのは分かったけど、声が混ざってよくわからなかった。な?」
「お、おう。そうだな」
牧谷君に話を振られて答えるも、少しぎこちない。沙耶香はこの違和感を敏感に感じとったようで、
「本当に?誰のも分からなかったの?」
チラリとこちらに視線を向けてくる。それに続いて叶もこっちを見てくる。なんかちょっと恥ずかしくなり、視線を横にやる。
「えっ、や………き、聞こえてたから。奏の声はちゃんと聞こえてたから!」
何故か慌て始めた叶。何か勘違いでもしているのかもしれない。
「へぇ〜?奏ちゃんの、ね?」
沙耶香の顔は笑っていて、さっきみたいにいい笑顔をしてるのに何処か黒い印象をうける。叶はバツが悪そうだ。
「ちょっとからかいすぎたかしら。お詫びを兼ねて代わりに聞いてあげるわ。奏ちゃん、騎馬戦での羽柴くん格好良かった?」
「ん?まあ、すごく格好良かったよ。頑張ってるなあって」
「らしいわよ?」
これがお詫び?よく分からない。叶は顔赤いし、なにこれ。
そんなこんなで昼休みも終わりの時間となり、午後から体育祭が再開する。頑張らなくては。
はい、丸々一週間間隔空きましたね。ネタにしたいことがあるのになかなか書き出せなくて私のアタマの悪さを実感するばかりでした。
それでもまあ、少しでも楽しんで読んで貰えたなら嬉しい限りです。
と言うか、この子達が競技で活躍するところ書いてないんですが。なぜこうなった。




