夏休みを終えて
一週間後ではあるけど月曜日になってしまった……
海に行ったり、家でゆったりしたりと楽しく過ごした夏休みも明けて、とうとう新学期。長期休暇が終わってしまった喪失感と目前に迫っている音桜金祭への期待感が入り混じる。
「奏ちゃん、おはよう」
「奏、おはよう」
ドアを開けて玄関を出れば既に見なれた光景となった叶と恵海ちゃんの制服での待ち姿。また学校が始まったんだと強く実感できる。
「叶、恵海ちゃん、おはよう」
二人に挨拶を返し一緒に学校を目指す。登校中には他愛のない話をして歩いた。お互いの家やどこか遊びに行った時の会話とはまたちょっと違った感じがしてこれも学校があるということの醍醐味なのかなって改めて思う。
♢♢♢
「おはよう」
校門をくぐり生徒玄関に向かう途中で声をかけられる。振り向けばそこには渚と沙耶香の姿。いつもなら俺達よりも登校が遅いのでここでばったり会うことは初めてになる。
「渚、おはよう。沙耶香もおはよう」
「おはよう、奏ちゃん」
叶と恵海ちゃんもそれぞれに挨拶を返す。
渚達とここで会ったのは叶達とは結構話し込んでたからそれのせいかな?もしかすると新学期にワクワクして渚達が足早になったてことも有り得るかもしれない。
新学期にテンションが上がって少しはしゃいで登校する渚と沙耶香を想像してみる。
………それはちょっと可愛いかも。
「奏ちゃん、なんか変な想像してないかしら?」
「………そ、そんなことないよ???」
「本当に?まあ、怒ってるわけでもないからいいわよ」
沙耶香って最近になってよく俺の心を読んでくる気がするんだけど気のせいなのかな?悪い想像していたわけじゃないのに冷や汗が止まらないよ。
そしてそのまま沙耶香達も一緒に教室へと向かった。
♢♢♢
教室に入ると皆の声がいつもの三割増くらい大きく聞こえる。やっぱり他の人達もどこか浮かれているのだと思う。
「お?皆おはよう。今日は4人揃って登校かな?」
「うん。校門のところでばったりね」
他の男子と楽しそうに喋ってたにもかかわらず教室に入ってきた俺達を目ざとく見つけてやってくる牧谷君。これで主要メンバー五人?が集まった。クラスが同じだから当たり前なんだけどね。
「叶はともかく、皆と会うのってなんか久しぶりって感じがするよね。夏休みに何回か一緒に遊んだのにね」
「そうだね。夏休み前はほぼ毎日会ってたから一週間二週間も会わないと少し寂しかったよ」
「俺も皆に会いたかったな」
「お前が言うと何故か危なそうな気配がするのは俺だけか?」
叶、俺もそう思う。でも皆それぞれでそうやって思えるくらいには仲良くなれたって思うとすごく嬉しいなあ。このまま仲良くしていたいものです。
「それはそうと、『叶はともかく』ってところが少し気になるわね。二人でよく会ってたのかしら?」
目を爛々と輝かせて沙耶香が訊ねてくる。
前々から俺に叶とのことでからかってくる嫌いがあったけどここまで目がキラキラさせて聞いてくるのは初めてかもしれない。なんかろくなこと想像してなさそうだ。
「いいね。私もそれには興味があるね」
渚も……まあ、教えて困ることではないから別にいいかな?
「そう?まあ、叶とは夏休みもよく一緒にいたよ。というかほぼ毎日かな?」
「そうだな。結構奏の家にお世話になったな」
「そういうことだよ」
「「「………………」」」
あれ?どうして三人とも黙るの?おかしな点は何も無いよ?
「奏ちゃん、それって何時解散してるんだい?」
「解散?大体は夕食前だけど、一緒に夕食を取ったり、偶になら泊まってくこともあったよ」
「ほおお???????」
「奏、それ以上は何も言うな。俺が危ない」
そういうので叶の方を見てみるが何も危機らしきものは見当たらない。さっきよりも近い位置で牧谷君が笑っているだけだ。
「何も危なそうに見えないよ?」
「お前の目は節穴か?」
失礼な、そんなわけないのに。
「お泊まりって言ったけど、もしかして一緒に寝たりしたのかしら?」
「もちろん、(同じ部屋で)一緒に寝たよ?」
「羽柴くんやるわね!」
「全く……隅に置けない男だよ」
「…………………………………………」
「奏!言葉が足りない!足りないから!頼むから付け足してくれ!」
足りない?何か足りないこと…足りないこと……………え!?もしかしてあれを言えってこと?前に内緒にしとけって言われたはずだし、流石にちょっと恥ずかしいけど叶は付け加えて欲しいらしいし…むう……仕方ないかな?
「分かったよ…」
「分かってくれたならいい」
「ま、前なんだけどね?」
「うん」
「ふむ」
「………」
「一度叶に抱え込まれて寝たことがあったんだよね………」
「えっ、ちょっ、奏さん?」
「「「……………………………」」」
あ、あれ?また黙り?け、結構恥ずかしいことをいったんだけどな?反応無いとちょっと困る。
「羽柴くんとても大胆ね!少し見直したわ!」
「ああ、君はやはり男だよ」
「かぁぁぁあなああぁぁたあぁぁあぁ!!!!!」
「そうじゃねえええええ!バカやろぉぉおおおおお!!!!!」
ええ……違ったの?勇気出して言ったのに………
というか、なんで叶と牧谷君はこんな教室で鬼ごっこみたいなことしてるんだろう。
「奏ちゃんはもう暫くはこのままでいて欲しいわね」
「彼には少し気の毒だけどね」
結局、叶と牧谷君の鬼ごっこは担任の先生がやってくるまで続いた。放課後に二人ともかなりしごかれたらしい。
次の更新は来週の土曜日にしたいと思います。何度も遅らせるようなことになって申し訳ないです。
………言いすぎて言葉が軽くなってないかが少し心配。




