海①
先週更新が出来なくてごめんない。なかなか筆が進まないのと時間が足りず……せめて毎週更新ができるようには頑張ります。
雲一つない空からさんさんと降り注ぐ陽の光。一度匂いを嗅げば鼻いっぱいに広がる潮の香り。踏みしめると僅かに沈み込み、ジャリっと砂特有の音が波の音と共に耳にやってくる。人も適度にいて、騒がしすぎず静かすぎず丁度いい賑やかさだと思う。
夏休みに入り、俺は恒例のメンバーで海を訪れていた。
♢♢♢
「おっよぐぞぉ〜!」
一人駆けだす静流。海を目の前にしてそのテンションを抑えきれなかったらしい。
「静流、一人で行かないで。それにまだ着替えてないし」
「あ、忘れてた」
着替えてないの忘れてるって……はしゃぎすぎじゃないかな?元気があるのはいいことだけど。
「奏、ここの準備は父さんと母さんに任せて叶君や他の皆と一緒に着替えてくるといいよ」
「これくらい手伝うよ?」
父さんが気を利かせて着替えてきていいと言ってくれてるが少し気が引ける。
「静流も待ちきれないみたいだから頼むよ。な?」
そう言われてしまえば拒むことは出来そうにない。まだまだ父さんには敵わないなあ。
「わかったよ。……みんな、父さんたちが場所の準備するから着替えて来いって」
「いいのか?」
「任せてくれってさ」
そうか…と呟き頷くやいなや、叶は皆と父さんの元に行く。
「「「ありがとうございます」」」
「ははは、子供が変に気にすることじゃないよ。さあ、行ってきな」
俺たちは父さんの言葉に甘えて更衣場に向かった。
♢♢♢
「むむむむ……」
以前に渚たちと一緒に選んだ(というか一方的に選ばれた)水着と相対する。その場で試着をして選んだからそれなりには似合っているはずとは思うものの、こういう公の場で女物の水着を着たことなんてないから着るのを躊躇ってしまう。
「奏ちゃん、まだかしら?」
沙耶香から声をかけられる。当然まだ着替えてないのでそのまま着替えてないと伝えた。
「ちょっと恥ずかしくって……」
着替えてない理由も少し話す。
「そう、でも安心して?その水着は私たちがちゃんと見て選んだから奏ちゃんに似合ってるわ。羽柴くんも褒めてくれるに違いないわよ」
そっかな?それなら…ってなんで叶が話に出でくるの?!このくだりは定番なの!??
「叶関係ないよね?!」
「あら?てっきり羽柴くんに水着姿を見られるのが恥ずかしいからってことだと思ってたのだけど」
叶に…水着を……見られる?………そうじゃん、叶に俺の水着姿見られちゃうじゃん!?
「……………」
「忘れてたのね…」
そうです完全に忘れてました。静流のことを言えないくらい今日を楽しみにしてて忘れてました。
「はあ……どちらにせよ後の祭りよ。ここは覚悟を決めて着替えなさい。みんな表で待ってるから」
ペタペタと足音が遠ざかっていき、すぐにその足音は聞こえなくなった。
「覚悟決めなきゃかあ……」
俺はその水着を持ち上げ二度相対していた。
♢♢♢
意を決して着替えた俺は皆の前に姿を見せる。
――――水着の上からパーカーを被った姿を。
「「「「はああああ…………」」」」
女子陣の大きなため息。そんな反応しなくても…
「静流ちゃん、押さえて」
「はいっ!」
恵海ちゃんの命令に対して迅速に反応する。瞬く間に俺は囚われの身となる。
「な、なんで捕まえるの?離してくれない?」
振りほどこうとしてもビクともしない。貧弱なこの体が恨めしい。
「ふふふ、お姉ちゃん逃げようとしても無駄だよ。私の方が力強いんだから。ふへへ…お姉ちゃんの抱き心地いいなあ……えへへ」
え、これ絶体絶命のピンチすぎない!?貞操とかもろもろ危ない気がするんだけど!??
「静流ちゃん、その辺でストップ」
恵海ちゃんからの抑止の声。この危険物を止めてくれたことに感謝の念が湧き上がる。静流を嗾けてきたのは恵海ちゃんだということをすっかり忘れて。
「恵海ちゃん!止め『それは後のお楽しみね』…て………」
くれたわけではないらしい。周りも頷いている。どうやら俺の味方は誰一人いなさそうだ……………グスン。
「それはともかく、せっかく私たちが水着選んで皆で海に遊びに来たのに勿体ない!てことでいざっ!」
逃げることが叶わない俺はされるがままにパーカーを剥ぎ取られ、皆の視線が集まる。そんなに見ないでよ…
「う…ううう…………」
声にならない声をあげる。改めて見られるとものすごく恥ずかしい。
「ほらほら、手で隠さない隠さない」
自然に出てしまっていた手も直され、完全に水着を隠すものはなくなる。
「ほら叶。何か言うことがあるんじゃない?」
恵海ちゃんに背中を押されてちょっとよろめきながら前へ出る。
「ど、どうかな………?」
自由のきかなくなった口が勝手に言葉を発する。暫しの沈黙、そして重く閉ざされていた叶の口が開かれる。
「……可愛い。めちゃくちゃ可愛い。俺の語彙力がないことを後悔してまうくらいには可愛い」
顔が一瞬にして沸騰する。今この瞬間の俺の顔は夏であることを差し引いても異常なくらい赤い自信がある。
「あ、ありが…と……ぅ…………」
掠れた小さな声しか出なかった。言い終えるまで顔を上げ続けることができず俯いてしまう。暫くは顔を上げれそうにも無い。火照った顔を冷ますためにも今すぐ海にダイブしたいが体は言うことを聞かなかった。
最近、これを書いてるとこれでいいのか不安になりまくりで、ちょっとした感想やブクマが励みになるのでいいと思ってくれた方是非お願いします。




