人生ゲーム
週一で書く!といいながらもう遅れてしまった…
ごめんなさい
のらりくらりとゲームは進み中盤に差し掛かろうとしている。
「よしっ!平社員から部長に昇進だ!」
このゲームの職業はひとつの職につき三段階のグレードが存在する。皆が一次職の中、牧谷くんは一足先に二次職につくことになった。
「武也やるな。俺も昇格して見習い料理人から料理人になってやる」
叶も牧谷くんに続いて二次職に就こうと意気込んでいる。ルーレットの結果は八。残念ながら昇格マスは通り過ぎる。代わりに着いたマスは結婚マス。
「なになに……右隣のプレイヤーと結婚。それぞれ幸せポイント十と各プレイヤーから三千ドル貰う」
右隣?あ、俺か。
「えっと……よろしくね?」
「お、おう。よろしくな」
軽く言葉を交わす。
「お姉ちゃん、そこは『不束者ですがよろしくお願いします』でしょ!」
「そこまでしなくても……」
「ムードってものがあるの!ムード!」
そんなにちゃんとしなくてもいいじゃん。しかもこれゲームだし、ムードも何も無い。
「あと叶さんもちゃんとプロポーズしなきゃ!」
「俺もかよ…」
「何?」
「何でもございません」
「よろしい」
叶は圧を強めた静流に屈してしまった。静流強い。
「静流に一票だね」
「私もかな」
「奏ちゃんが言うところ見てみたいな〜」
と、残りの女子陣。静かな物言いだがその眼差しからは有無を言わせぬ圧力を感じる。叶とアイコンタクトをとる。反抗しても仕方がないので言うことにした。
「分かった分かった………奏、俺と結婚してくれないか?幸せにしてみせる」
叶の迫真の演技、本当にプロポーズされてるみたいだ。男の叶からされても嬉しくないけど。
「はい、不束者ですがよろしくお願いします」
叶が思いのほか本気できたので俺も俺ができる飛びっきりの笑顔を披露する。誰にも文句を言わせてやるつもりは無い。
「……どう?これでいい?」
妹たちに俺たちの芝居の是非を問う。プロでは無いのでダメと言われたところで困るけど。
「良かったよ!やっぱり結婚ってこういうのじゃないとね!」
「いや、ゲームだからね?」
「だからこそだって!」
もうわけがわからなかった。とりあえず合格を貰えたことを良しとしよう。
「はいお姉ちゃん、お幸せに〜」
「ありがと…」
御祝儀をもらう。ここまでがこんなに長くなるなんて……残りの四人も「おめでとう」や「お幸せに」と言って御祝儀をくれた。
叶も俺と同じような感じで皆から御祝儀を受け取る。牧谷くんがものすごい形相で叶を見ていたが見事なスルースキルでこともなげに受け取ってた。
次は俺の番。ルーレットを回し出た数字は五。叶と同じ結婚マスに着く。俺はさっき叶と結婚して既婚者扱いとなるので結婚はせずに子供が一人増えることになった。
「早い、子供ができるのが早いよ!できちゃった婚だったの!?」
「叶はそんなことしないって信じてたのになあ〜」
「君ってやつは…」
「羽柴くん……」
「叶めっ……!!!」
さっきの祝福とは打って変わって叶には非難の目を向けている。なんて恐ろしい手のひら返し。
……牧谷くんはそのままだね、うん。
「お前らな……」
流石の叶も呆れ顔。皆のめり込みすぎだよね。いや、ゲーム的には正しいのかな?分からなくなってきたよ……
♢♢♢
この後も順調に番が進みついにゲームが終了した。
「おかしい…こんなの間違いだ……」
牧谷くんがボソリと呟く。その声から僅かな怒りと悲しみが滲み出てる。
「諦めろ武也。これが現実だ」
叶が優しく牧谷くんを諭す。ただ何度も言うがこれはゲームだ。
「分かってる、分かってるけど……」
身体を震わせ唇を噛みしめる。
「俺だけ結婚出来ないなんてあんまりだろぉぉぉぉぉぉおおお」
俺と叶が結婚した後に静流と恵海ちゃん、渚と沙耶香が結婚した。一人残ってしまった牧谷くんは結婚出来ないのだ。ゲームの仕様だからどうしようもないよね。
「今更そんなこと言っても仕方ないよ」
「そうだぞ武也、代わりに仕事で大儲けしてただろ」
「一番ラブラブなお前らに言われると少しムカつくんだが?」
ラブラブ?何をどう見たらそう捉えることができたのか不思議なんだけど。
「あのやり取りはなかなかできるものじゃないよ。まさに夫婦とでもいうのかな?」
「見ててニヤニヤしちゃったわね」
と渚たちの談。ま、まさかね?恐る恐る静流たちに目を向ける。
にっこりとした笑顔。いつもなら俺もつられて笑いそうな笑顔なのになんだろう、嫌な予感しかしない。
「お姉ちゃんと叶さんこれでもかってくらい夫婦してたよ」
「将来の二人がありありと想像できちゃった」
そ、そんなに?普通に接していただけのはずなんだけど……
「お姉ちゃん想像してみてよ?散財する夫を咎める妻とそれを反省する夫、夫の昇格を共に祝う夫婦、夫からプレゼントを貰って喜ぶ妻、まだあるけどこの三つを聞いてどう思う?」
「仲のいい夫婦だなぁ〜って」
「はい、これがお姉ちゃんたちの会話の様子を傍から見た図だよ」
え?そんな……いやでも確かに俺からもお金が出ていくマスに止まったから叶に文句言って、叶の昇格を皆で祝って、後でお金になるお宝カードが叶から貰えて喜んだな……
「あううう…………」
実は周りからちょくちょく温かい視線がきているような気がしてたけどそういうことか……恥ずかしい。最近こういう事が多い気がするよ…
「恥ずかしがるお姉ちゃんはやっぱり可愛いよね」
「「「「わかる!」」」」
そんなところで団結しないでよ……
「さて、集計が出たよ。この七人の中でお金と幸せポイントの合計が高かったのは……」
皆が固唾を呑んで優勝を祈る。優勝者にはご褒美があるのだ。
「牧谷武也」
名前を呼ばれたのは牧谷くん。お金はダントツで稼いでいたし、幸せポイントも結構な頻度で貰っていたので納得だ。
「よっしゃああああああ!………あれ?なんか虚しいぞ?なんでだろう」
喜んだ直後に落ち込む牧谷くん。変なの。
「優勝賞品は食後に奏ちゃんが持ってきてくれるらしいからお楽しみに」
♢♢♢
というわけで食後、俺は牧谷くんに優勝賞品を渡す。
「はい、牧谷くん。優勝おめでとう。あ、ここで開けてね」
冷蔵庫から取り出したやや小さめの箱。中身は開けるまでのお楽しみ。
「ありがとう。どれどれ中身は………!!!」
驚いてる驚いてる。
「もしかして手作り?」
「もちろん」
箱から取り出されたのは一人サイズのワンホールチョコケーキ。上には優勝の文字が書かれたチョコプレート。他にも少しでも豪華になるようにトッピングをしてある。
何が貰えるかは食後で冷蔵庫から取り出したってだけである程度は察せたと思うけど。
「嬉しすぎて食べれないかも…」
「いいけど、残らないよ?」
ほかの皆で食べるから。
「……!!!食べます。ここで食べさせていただきます!」
「よろしい」
せっかくだから目の前で食べてほしいよね。
「いただきます」
牧谷くんはスプーンでケーキを掬い口に運ぶ。何度か咀嚼し飲み込む。
ど、どうだろうか……
「美味しい!凄く美味しいよ!ああ……あそこでの孤独はこの瞬間のためだったのか……!!!」
そう言って次々にケーキを口に運んでいく。もうちょっとゆっくり食べてほしいけど喜んでもらえてるのでよかった。
「か、奏。俺たちの分てあったり……」
叶以外も期待を込めた目で見てくる。よっぽど食べたいらしい。
「そんな目をしなくてもみんなの分もあるから。あそこまで手はこんでないけどね」
冷蔵庫からみんなの分も持ってくる。キラキラした目をしていてとても可愛く感じる。叶なんて子供っぽくて特に…
「手作りケーキを食べれるのが俺だけじゃないのは残念だけどこの美味しさは味わうべきだ」
喋りながらもケーキを食べる手が止めないという高度なことをしてる。こんなところで無駄な才能を発揮してるよ…
他の皆も美味しいと言いながらケーキを食べ進めている。手作りしたかいがあるよね。
「奏、このケーキ美味しいな」
「でしょ!」
楽しく騒がしいながらもこうして夜は更けてく。
せっかくのGWなのでなるべく書いて更新できそうならしていきます。




