家に集まる
二千字程度のはずなのに本当に週一更新になりそうだとは……
ついに叶たちが遊びに来る当日、皆が家に訪ねてくる時間まであと少しに迫っている。俺は母さんと一緒に皆に出す昼食を作っていた。
「母さん、ポテトサラダ出来たよ」
「ありがと。それじゃあ次は……」
ピンポンとインターホンの音。どうやら着いたらしい。
「奏、ここまででいいから迎えにいってきなさい」
「はーい」
駆け足気味に玄関へ向かう。楽しみすぎてちょっとにやけてしまう。
「みんないらっしゃ〜い」
ドアを開けるといつもの四人と恵海ちゃんがいた。
「すまん、姉貴もくっついてきたわ」
「人を金魚のフンみたいに言わない!奏ちゃんお邪魔するね」
「どうぞどうぞ」
残りの三人もお邪魔しますと言って玄関を通っていく。全員が通ったところでふと気づく。皆荷物が多いのだ。特に女子二人。
「何でみんなそんなに荷物多いの?」
「気になるかい?」
「もちろん」
当然気になるから聞いてるのにわざわざもったいぶらなくてもいいのに。渚ぽいといえばぽいけど。
「ふふふ、実はね…『お泊まりに来たからよ』そうそうお泊まりに……って先に言わないでくれないか?!私が言いたかったのに!」
「もったいぶる渚が悪いわよ」
渚と沙耶香、2人仲良くコントをしている。
ともあれ多い荷物の理由が判明した。どうやら家に泊まっていくらしい。それなら荷物が多いのも頷ける。
「いや、お泊まりとか初耳なんですけど!?」
驚く俺を見て皆がいい笑顔になっていた。ちょっとイラッとした。
♢♢♢
「このポテトサラダ、奏ちゃんが作ったんだよね。美味しいよ。」
だんまりを決め込み淡々とご飯を食べる。俺だけに秘密を作っていたのが少し腹立たしかったので仕返しだ。
牧谷くんは俺がポテトサラダを作ったと聞いた瞬間に勢いよくポテトサラダだけを食べていく。ゆっくりと他のおかずやご飯も食べてほしい。
「泊まること秘密にしててごめんよ奏ちゃん。その…機嫌を直してくれないか?」
「……天草庵でおごり」
「お易い御用さ」
「ゆるす」
そう一言だけ口にして笑顔でもう一言。
「さて美味しくご飯食べよっか!」
皆キョトンとしてる。ちゃんと驚いてくれたようだ。してやったりと内心ほくそ笑む。
「え、何?演技だったのかい?」
「そんな大層なものじゃないよ。でもそんなに怒ってるわけじゃないから」
「よかった…」
「あ、勘違いはしないでよ。そんなに怒ってないけど悲しかったんだから……」
こればっかりは本当だ。サプライズはわくわくがあって好きだけどこういうのはね。
「うん、本当にごめん」
「すまん」
「ごめん」
「ごめんね」
皆それぞれに謝ってくれてる。
「もういいよ、僕も大人げないまねしちゃったし。けど次からはちゃんと僕にも話してほしいなぁ〜って……ね?」
これで次からはこんなことがないといいな。あったら今度はしっかり怒ろう。
まあ流石に皆なら大じょ……
「くっ……反省しないといけないのに奏ちゃんを見ると撫でたくなってしまう」
「激しく同意」
「奏ちゃんずるい」
「奏は親友…奏は親友…」
……う夫じゃないかもしれない。なぜこれほどまでに締まらないのだろう。
「お姉ちゃん、あざとい……可愛いだけに誰も太刀打ち出来ないよ」
「奏ちゃんが女の子だよ…」
「あらあら」
と外野三人の反応。そんなことはないと思うんだけどな、皆が過剰反応し過ぎるだけで。
というか母さんは終始ニコニコして俺を見ていたな。見透かされていたと思うと少し……いや、めちゃくちゃ恥ずかしい。今も温かい目で俺を見ている。
「ほ、ほら!食べよ!ごはんが冷めちゃ勿体ないよ!」
急に込み上げてきた恥ずかしさを隠すように声を出す。しかし上ずった声が出てしまい余計に恥ずかしさが増すことになった。
「理由は分からないけど恥ずかしがってる奏ちゃん可愛い」
「激しく同意」
「奏ちゃん可愛い」
「奏は男…奏は男…」
「お姉ちゃん…!!!」
「奏ちゃんが可愛すぎる!」
「ふふふ」
もう…やだぁ…………
俺はこのまま食事が食べ終わるまでいじられ続けた。せっかく楽しい雰囲気になったためにやめてと言い出せるはずもなかった。
♢♢♢
「や〜食べた食べた。奏ちゃんの作ったポテトサラダは美味しかった。うん。」
「武也、お前はもう少し他のおかず食べた方がいいぞ……」
「奏ちゃんが作ったことで生成される万能栄養素『カナデール』を摂取したから大丈夫」
「そんな栄養素ないからね!??しかも名前変だし!」
なんてヘンテコリンな名前をつけるのか。いや問題はそこではなくほとんどポテトサラダしか食べてなかったことなんだけど。
「なるほど。じゃあ私たちは奏ちゃんの作る料理で健康待ったなしってことだね」
「奏ちゃんのおかげで私の肌のツヤが出てきたかも」
「二人とも乗らないでっ?!」
渚も沙耶香も悪ノリがすぎるよぉ……ツッコミが追いつかないし、大変なんだから。
「奏ちゃんたち楽しそうだよね。いいな〜私もそっちのクラスなら良かったのに」
「そんなにいいものじゃないよ。僕が弄られるだけだし」
何度からかわれ続けたことか。この一ヶ月だけでも数え切れない。
「愛されてる証拠だって。それに楽しいんでしょ?」
「……うん、楽しいよ」
「よかったね」
前に母さんにも話したけどやっぱり皆には感謝してるんだよな。
「奏!姉貴!人生ゲーム持ってきたんだからするぞ!早く来い!」
先に俺の部屋へ向かっていた叶からよばれる。人生ゲームがそんなに楽しみなのか?いや皆でする人生ゲームは俺も楽しみだ。
「呼ばれたね。行こうか」
「うん」
頷き恵海ちゃんと俺の部屋に向かう。
「叶!せっかく私が奏ちゃんと喋ってたんだから少しは待ちなさいよ!」
「毎朝喋ってるだろ……」
部屋についた時にはあらかたセットが並べてあり既に各々で座っている。
「さて奏ちゃんも恵海も来たことだし始めようか」
これから人生ゲームが始まる。この七人の中で誰が一位に輝くのか、楽しみで仕方がない。
今日一日……いや明日もか、楽しい日になる予感しかしないね!
あれ?楽しい雰囲気のはずが途中消えてるのなんで???
せっかく出した恵海も後半まで空気だし……
ともかく次回は人生ゲームで遊ぶところを書く予定!




