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ギルオペっ!  作者: 虎山たぬき
1/6

00 完全勝利!

 社畜も眠る深夜2時。


 六畳一間のアパートの一室で、俺こと一ノ瀬律(いちのせりつ)は、パソコンのモニターに映る数字列をじっと見つめていた。


 勝った。完全に勝利した……人生に。


 俺は叫び出したい衝動をぐっと堪えて、何度も見直した数字の羅列をもう一度確認する。


 よし。間違いでも勘違いでも夢でもない。これはまぎれもない現実だ。


 何度もつねったり叩いたりした二の腕をさすりながら、しばしの賢者タイムが流れる。


 某有名宝くじの一等で6億円当たった。


 苦節24年。とうとう俺は、攻略不可能と名高いリアルという糞ゲーで完全に勝利した。全クリと言ってもいい。後は幸せなエンディングが流れるだけだ。


 今思えば辛い日々だった。


 高校卒業後は、普通に就職して普通の人生を送るのが嫌で、自分には何かあるはずだと信じて早6年。


 自分が好きな事を仕事にしたいなんて、今思えば浅はかだったかもしれない。


 漫画家、小説家、ゲームクリエイター。色々と手を出してみたが、どれも長続きはしなかった。


 漫画は絵を一から覚えるのが苦行すぎて挫折した。


 ゲームクリエイターは、プログラムを覚えるのが果てしなさすぎて辞めた。


 小説家は、ネット投稿してみたものの、誰も読んでくれなくて心が折れた。


 気が付けば24にもなって就職もせずに、ただ食って寝るためにバイトするだけの日々。


 友達も彼女も無く、唯一の楽しみは安酒を飲みながらアニメや漫画やゲームをすること。


 怖かった。本当に怖かった。未来が、将来が、明日が。


 このまま、死んでいく自分を想像しては恐怖し、現実から目を背けるために酒を飲んで、娯楽に逃げ続けてきた。


 だが、もう恐れることなど何もない。


 俺には6億円があるっ!


 これまでは、欲しいオタグッズも厳選して来たが、もうその必要もない。


 これからは欲しいものは、欲しいだけ買える。貧しい消費豚の牧場から広い世界へと旅立てるのだっ!


『異世界行きたい。異世界行きたい。転生したい。転生したい』


 何気なく手にしたコピー用紙の裏には、病んでいた頃(つい三日前)の俺が無意識に綴った字があった。


「……ふふ」


 可愛いやつだ。


 そりゃあ、ちょっと前までは思ってましたよ。エルフやケモミミ美少女が居る世界で無双して、ハーレム作ったりしてぇ、ってね。でも、もう異世界なんて用はない。


 異世界なんて行ったら死の危険がいっぱいだしな。


 これからは、大好きなソシャゲとネトゲを存分に楽しみながら、リアル無双しながら自堕落的に生きていくぜ!


 まるで小学校の頃に書いた作文を懐かしむような気持ちで、そのコピー用紙を優しくクシャッと丸めたその時だった。


「っ!?」


 突如、天井から眩い光が放たれ、ぐるりと意識が回るような浮遊感の後、視界は闇に閉ざされていった。


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