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第2話 教会での日常

「ねえねえ、聞いた? 姉様」

「どうしたの、ルーク?」


私の名前はエリーナ・グランエイム。

聖母マリーヌの娘だ。

私が教会での仕事を手伝っていると、ルークが私に話しかけてきた。


ルークは私の弟で、とても可愛い子だ。

髪の色は父様譲りの銀色だが、瞳の色は父様とも母様とも違う真紅だ。

私は母様譲りの金髪と、父様譲りの緑の瞳なので、パット見ルークとは姉弟に見えないが、そんな事はどうでもいい。


私にとって、ルークは大切な弟で、とても愛しい存在なのだ。

そして、そのルークが、私に声をかけてきてくれた。

こんなに嬉しい事はない!


「何か気になることでもあった? 何か困ったことがあったらすぐにお姉ちゃんに言うのよ? 分かった? ……あ、でも困ったことが起きてからじゃ遅いわね。これからは私が付きっきりで」

「お、お姉ちゃ……姉様、どうしたの?」


おっと、ルークが困惑してしまっている。

最近、ルークへの愛が暴走しがちなんだよね……気をつけないと。


「それで、どうしたの?」

「うん、それがね……リンちゃん達が、魔族を奴隷にしたんだって」


……ハイ??

リンといえば、ルークがよく遊びに行ってる孤児院の女の子よね?

え、魔族を奴隷にしたの?

凶暴で凶悪な魔族を?

奴隷の首輪をつければ無理やり命令を聞かせられるとはいえ、孤児院の子達も凄いわね……。


「僕があげた魔道具のおかげで、捕まえられたんだって」

「ああ、あの魔道具ね」


そういえば、子供の魔族の力を弱める効果を持つ魔道具があったわね。

とても高価な物なのだけど、優しいルークは、友達の為にその魔道具を孤児院に寄付したらしい。

なんて優しい子なんだろう……さすが私のルークね!


「魔族は二人いて、片方を殺して片方を奴隷にしたみたいだよ。凄いねー、リンちゃん達は」

「ええ、そうね」


素直にそう思う。

子供とはいえ、魔族を倒して奴隷にするなんて、中々見所のある子達だ。

きっと将来は、優秀な騎士や魔道士になってくれるだろう。

……私も、負けていられないな。



※ ※ ※ ※ ※



「こんにちはー」

「こんにちは……あ、ルーク!」


姉様と別れた後、僕は教会の掃除をしていた。

教会には色んな人が来るので、熱心に掃除をしていたら、僕のよく知る二人がやって来た。


「こんにちは、アネス君、リンちゃん」


二人は、僕がよく遊びに行く孤児院の子供達の中で、僕と一番仲が良い。

休日は、よく教会にも顔を出してくれるのだ。


「あら、アネス君にリンちゃん。こんにちは」

「こんにちは、シスターさん」

「こんにちはー」


シスターの一人が二人に気づいて、挨拶を交わす。

至って普通の、教会での日常風景だ。


「そういえばリンちゃん、魔族を奴隷にしたんだって?」

「ええ、そうよ! あいつ、魔族の癖にやけに素直だったわ!」

「ま、扱いやすくて良かったけどな」


僕は、リンちゃんとアネス君から魔族の奴隷について話を聞いた。

二人とも、気が強くて口が悪いので、奴隷に対して散々な扱いをしているようだ。

荷物を運ばせたりするのは勿論、殴ったり蹴ったりしてストレスを発散するのもいつもの事だそうだ。

まあ、魔族ならそれくらいされても当然だし、同情の余地なんか無いけど。


「でも、荷物運びは自分でやった方が良いよ。身体を鍛えられるからね」

「えー、面倒くさいよー」

「それに、あいつにやらせた方が楽だぜ?」


僕はそれなりに真面目に生活しているつもりだけど、アネス君とリンちゃんは結構不真面目だ。

それに、さっき言ったように気が強くて口が悪いので、喧嘩の回数も他の子達に比べて多い。

……まあ、僕がこの三人の中で一番苦労人なのは昔からだし、今更気にはしないけどね。



※ ※ ※ ※ ※



「……相変わらず、仲が良いわね」


エリーナは、離れた場所からルーク達の様子を見ていた。


「リンさんとアネス君……ルークとは正反対の性格なのに、何故かウマが合うのよね……」


ルークと話している金髪の少女と赤髪の少年を見つめ、ため息をつく。

そう、昔から真面目なルークと不真面目なリンとアネスの三人は、仲が良いのだ。


「……何を話しているのかな?」


この位置からでは、三人の声は聞こえない。

かと言って、近づけばバレてしまう。

別にバレても、ルークがエリーナを責めることはないだろうが、リンとアネスに揶揄われるのは目に見えているので、彼女はその位置から様子を伺っているのだった。


「ああ、私もルークと一緒に話したい……!」


さっきまで一緒に話していたし、そもそも姉弟なので話す機会はいくらでもあるのだが、エリーナは今ルークと話しているリンとアネスに嫉妬していた。


そして、その様子を眺めて微笑ましく思う影がさらに二人。


「ふふっ、エリーナったら、焼き餅を焼いているわよ」

「本当にルークのことが好きなんだな、あの娘は」


マリーヌ・グランエイムと、ゼハイル・グランエイム。

ルークとエリーナの両親が、エリーナから少し離れた場所から、その様子を観察していた。


「それにしても、孤児院が魔族を奴隷にするなんてなあ……高かったんだろう?」

「貴族の中には魔族を奴隷にする人が増えてるみたいだけど、滅多に捕まえられないから値が張るのよね。でも、孤児院の場合は奴隷の首輪を買うだけだったから、そこまでお金は掛からなかったんですって」


そんな話をしながら、マリーヌとゼハイルは、ルーク達の観察を続ける。

エリーナがルークに過度な愛情を注いでいるように、この二人もまた、娘と息子に多大な愛情を持っているのだった。






ブラコンと親バカが合わさって最強に見える。


この三人、正直に言うとあまり出番が無いです……。

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