カイン
カインは幼い頃から不思議な力を持っていた。
人や動物の心を自由に操る能力だ。
その能力は今まで生きてくるのに役に立った。
しかしその能力がある事を周囲に知られてしまい魔王を退治する役を勝手に押し付けられたのだ。
めんどくさいしやりたくないと思った。
しかし、国から多額の金が払われると聞いてカインはやる気になった。
元々残虐性を持っており、常に誰かを傷つけたくて仕方ない衝動に駆られる。
そんな自分が”勇者”をすることがおかしかった。
カインは金と殺戮の為に魔界へやって来たのだ。
しかし、魔界へ来たところ魔王不在だった。
数年待ったが戻ってこなかった。
いつしかカインは魔物から慕われるようになり、魔界の支配者となったのだった。
魔王不在から20年。
さすがにしびれを切らし前魔王を誘き出すために村を1つ滅ぼしてみた。
すると子供を1人連れてやって来た。
子供には瘴気除けが施しており前魔王が大切にしていることが分かった。
その子供は滅ぼした村の生き残りで前魔王をここまで連れてきてくれた。
カインはその子供を利用しようと考えた。
そう考えると笑いが漏れる。
1人でにやけてしまう。
そんな事も気づかずミッドは子供を気遣っている。
前魔王の子供なのだろうか?
とにかく利用できる者は何でも利用しようと思う。
子供はカインに怯えている。
カインはその様子を満足そうに眺めた。
あの怯えられる瞳が堪らない。
(前魔王ミッドはどうも俺より人間っぽい)
カインはミッドと直接戦うより子供を操ってミッドを殺す方が楽しそうだと思った。
カインは早速暗示をかけた。
子供はカインの方に近づいていく。
「行くな!ユイ!!」
「こっちへ来い子供」
ユイは操られている。
怯えた瞳でカインの元へ進んでいく。
止めようとミッドが動くが、結界を張られ動きを封じられた。
(ミッドさん・・・助けて・・・)
ユイの心の声がミッドに聞こえた。
しかし、ミッドの体はカインに封じられ動かない。
カインは刃物をユイに渡した。
これからが本番だ。
楽しいものが見られると良い。
カインはそう思って笑った。