魔界の入り口付近の村
馬を買いユイを前に座らせ、自分は後ろに座った。
「ユイ、馬は平気か?」
「うん。よくパパとこうやって乗っていたから」
「・・・そうか」
聞くべきじゃなかったと反省した。
ユイには今、家族の話題は避けてやるべきだった。
「悪い」
「え?何が?」
ユイはきょとんとしていた。
そんなに気にしなくても良かったのだろうか。
数日かけて魔界の入口付近の村に辿り着いた。
「ここ!ここが私の住んでいた村なの」
確かに村があった形跡はあるがもう人が住める感じではなくなっていた。
「何処で両親とはぐれた?」
「・・・わからない」
(ああ、また話題を振ってしまった)
だが、大事なことだ。
それがきっかけで今、ユイの両親が何処にいるかわかるかもしれない。
ユイは両親を呼んでみた。
「パパ!ママ!ユイだよ!!」
しかし、誰もいない。
ユイは悲しそうな顔をした。
大きな瞳から涙が零れ落ちそうになった。
「ユイ!泣くなよ?まだ何処にいるか分からないだけなんだからな」
そう言われユイは涙を拭いいつものように笑いながら返事をした。
「うん」
気付かなかったけれどここの村には瘴気が溢れかえっていた。
呪いのおかげでユイには影響はない。
ミッドは腰から下げていた剣を抜き空間を切り裂いた。
「ユイ、来い」
「ひゃぁ!」
ミッドはユイを自分の肩に座らせた。
そして切り裂いた空間の中に入り歩き始めた。
「ユイ、ここは魔界だ。危ないからそこでじっとしていろよ?」
「うん」
ユイは怖いのかミッドの首にしがみついた。
「ユイ!絞まってる!!」
「わぁ、ゴメン。怖くてつい」
「いや、気にしないでくれ。これ位大丈夫だ」
少し苦しかっただけだと強がって見せた。
ユイは軽く首にしがみついた。
「もうすぐ魔王城が見えてくるぞ」
「え?」
「ほら、あれが魔王城だ」
そう言いながら指をさすと立派な城が目の前に現れた。
城の中に入って見ると昔のままだった。
中は少し埃っぽいけど配置などは何一つ変わってなかった。
ついに魔王の玉座の間に辿り着いた。
重たい扉を開けると玉座には1人の男が座っていた。
「お前は誰だ!?何故村を襲った?」
「俺の名はカイン。俺は元勇者だ。今は魔王をやっている」
「・・・何だって!?」
思いもよらない言葉にミッドの思考は一瞬停止しかけた。
「お前が元魔王のミッドか。お前が不在のせいでこの魔界は荒れていたんだぞ。それを治めた俺に感謝して欲しいくらいだ」
「そうだったのか・・・。それで魔王になったのか?」
「いや、ミッドを倒したら魔界を支配するつもりだった」
「何故、勇者がそんな事をする!?それにこの子の村だって燃やして一体何がしたかったんだ!?」
ミッドはユイの為に怒った。
「村を焼いたのは元魔王のお前を誘き出すためだ。誰が魔王をやっているか気になっただろう?」
「村人たちはどうした?」
「元魔王ならどうしたかわかるだろう?」
カインは言葉を続ける。
「魔物たちに喰わせた」
ユイの体がガクガクと震えだした。
「まぁ、そこのガキみたいに運良く逃げ延びた奴もいたけどな」
「カイン!!」
ユイは床に膝をつき泣き始めた。
ミッドはその姿を見てカインだけは絶対に許さないと誓った。