表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

連載できればしたいな

Minimum of millenniuM

作者: ステレイ

住んでいるのは中世ヨーロッパのお城を想像してください…。

*******************



これは王都で昔から出版されている本。

タイトルは"Minimum of millenniuM"


彼女は世界の終わりからずっと待ち続けた。

そんな彼女の記憶を見せてもらいませんか?



*******************



きっと、私は待てると思うの。

今の貴方が死んでしまっても次の貴方がここに来るまで。


だって前もずっと待っていたんだよ。そしたら貴方なんて言ったと思う?

"まだ待っていてくれたのか"って言ったんだよ。

失礼だよねほんと。遅くなったって自覚しているなら急いでよ!


だから、大丈夫。ちゃんと約束するよ。


"待っているから。早く来てね。"


これで大丈夫。だから早く来てね。



*************



ふと目を覚ます。

あぁ、あの時の夢だ。


目尻を伝った涙はきっと、弱音を口に出せない私の心を代弁してくれているんだと思う。


涙を拭って起き上がる。ここは空っぽな空間。

世界が終わりを迎えて此処には私以外いなくなってしまった。


他の場所に行ってみたいと思うけど、ここを離れるわけにはいかない。

彼を待たなくちゃいけないから。


あれから何年たったかな?あの時は3時間待たされたな。


でも理由が理由だから仕方がなかった。なにせ、迷子の子供を親の所まで届けていたからね。

彼と一緒に来た親子が謝ってきたし。しょうがないと片付けた。


ほんとに、お人好しだったなぁ。


過去を振り返りながら外に出て空を見上げる。相変わらずの曇り空。


私は青空が見たいんだよなぁ。


そう遠くない場所で火山が噴火した。


…今日も今日とて物騒な世界だなぁ。



***************



私は食事も水も必要としない。何故か分からないけけどそういう体になってしまっていた。

睡眠も必要無いけど、ずっと起きているのも疲れるから睡眠だけは取っている。


あれから髪も伸びた。けど、他は何にも変わらない。老いないのだ。


生き物ってすごいね。環境に適応して進化してきたんだもんね。


自分の真っ直ぐな黒い髪を弄りながら目の前を流れていくマグマを見つめていた。


三つ編みにしたり、ツインテールにしたり。ポニーテールや編みこみ。…お団子にサイドテール。


ぐらいしか出来ないけど。暇なんだよね。

編んだら解いて、纏めたら解いて。を繰り返していた。


いっそのことバッサリ切ってしまおうか。でも、彼に褒められた髪だからそれなりに大事にしようと思い直す。


目の前のマグマはいつの間にか冷えて黒く固まっていた。


あれはあれで綺麗だったんだけどなぁ。迫力あったし。

何より、生きているように、胎動するように流れていくもんだから見とれちゃうよね。

いつの間にか意識飛んでたけど。


腰をかけていた岩から飛び降りて帰路につく。

途中で空を見上げてみたけど、やっぱり曇り空。いつになったら青空が見えるかな。


そんな事を考えながら眠りについた。



*****************·



今日は近場の川に来てみた。目が覚めてから水を見たくなったんだよね。


てくてくと散歩のペースで歩いていく。

川辺についた。太陽が出ていたならキラキラと水面に反射して綺麗だっただろうに。


魚のいない澄んだ水。これはきっと有毒。


ぱしゃりと足を水に入れた。

うーん。ちょっとぬるい。最近噴火したばっかりだもんなぁ。残念だ。


元来た道を歩いて戻る。戻ったらお気に入りの岩の上で歌を歌おう。


私、みんなに歌うまいねって言われたことあるんだ。だからちょっと自慢。

だから、この世界と私に相応しい歌を歌おうと思うんだ。


でも、その歌の中では主人公は幸せに死ねるんだよ。



*****************



真夜中であろう時間に目が覚めた。

目が覚めたなら仕方がない。起きよう。


ぶらぶらと岩の上で足を揺らす。真っ暗ないつも通りの曇り空を見上げてまたもや思う。


あれから何年たったかなぁ。

早く来てねって言ったのになぁ。


ちょっと悲しいよ。


いつぶりかの涙が零れた。でも今日はいつもとちょっと違った。すぐに泣きやめない。


どうしよう。とっても、寂しい。


自覚してた筈なんだけどね。なんだろうね。我慢出来なくなったのかな。

でも、ちゃんと待つよ。私、約束したからね。

だから、早く来てね。


ちょっとそろそろ限界かもしれないんだ。







あれ?いつの間に寝たんだろう。

泣き疲れて寝ちゃったのかな。ふふ。

泣き疲れたなんて、昔に戻ったみたい。


ちょっと嬉しくなった。

起き上がって周りを見ると緑の雑草が水没してた。


あれ?また気候変動?今度は水没か。

魚は泳いで来るかな。


所々見えている岩の上を飛び移りながら帰路に着いた。


でも、寝ちゃったからなのか眠れなかった。もう一度外に出てすぐ近くの岩の上から水を眺めてみた。


風があるから水が揺られて波が出来る。


とぷんっ、と石ころを落としてみた。

パッ、と何かが水中で翻った。


魚かな。岩陰に入っちゃったから見れないや。今度は何もしないから泳いでいる姿を見せてね。



****************



周りが水没している中、私の家は平気。住んでいる所が高い所にあるからね。

空っぽな空間ってのは苦手だけど我慢してあげるよ。


あの時の望み通り岩の上から泳ぐ魚をずっと眺めていた。


綺麗だな。


素直にそう思った。青色の魚がいた時はすごく嬉しかった。青空は見えないけど水の中には青い魚がいたから。


目を細めて水平線を眺める。果てが見えないから眺めるのは楽しい。


ふと視線を下に落とす。あの時水没した雑草はまだ緑色で生きている。


雑草も進化するんだね。


ゆらゆら水中で揺れる雑草はどうやら水草になりそうだ。

少し感心して帰路についた。



****************



ある日起きたら背中がむず痒がった。背中というか肩甲骨というかそんな位置。


まあいいやと思って外に出た。

お気に入りの岩までは先端のみが水から出ている丘だった場所や岩だった場所を飛び跳ねながら行く。


今日も今日とてアクティブに。


ぼおっと虚空を眺めていたら、我に返った。

なんか、髪が引っかかってる。


今日は風が意外と強い。風に遊ばれるがままにバサバサと靡かせていたのに。なんか後ろで引っかかってる。

背中に手を伸ばすと手触りの良い突起物があった。


なんだこれ。


グッ!と引っ張ったら…少し痛かった。

ナニコレ生えてるの?と体を捻って背中を見た。


…羽があった。

空想上でしかいないはずの。天使の羽のようなモノが。

畳まれているものの、かなり大きいんじゃないかな。


いつ生えたの?これ、動かせるの?飛べたりするの?


と思うと。

バサリ、と畳まれていた羽が広がり体が浮いた。


ま、マジか。


あ、でも楽だからいいや。このまま帰ろう。


どうやって降りればいいのか分からなくて長時間飛んでいなきゃいけなかったのは、ちょっと困った。


どうやら私は天使のようなものに進化したようだ。


でも、環境に適応するために進化するのに、有っても無くてもいい物が生えてくるのはよく分からないなぁ。



*****************



今日は私の家の屋根の上。すっごい高いから遠くまで見渡せる。


最近は気候変動も落ち着いて、周りは森になっていた。でも、けっこう近くに海もあるんだ。


そよ風にあたりながら今日はクルなと思った。どうしても、考えてしまうから。



あれから何年たったかな。まだ来ないのかな。


まったく。何時まで待たせるの?

ここで待ってるって約束したのに。探しに行きたくなっちゃうじゃないか。


膝を抱えてごろごろといじけてみる。


ほんとに、さぁ。何年経ったのかな。

ちょっと疲れちゃったよ。


早く来てねって言ったのに。


限界かもしれない。って思ってからも頑張ったんだ。

頑張ったよ。頑張ったんだよ。

何歳か分からない良い大人が泣きたくは無いんだ。


だから、お願いだよ。

もう一回言うから。来てよ。


ぼろぼろと涙が溢れてくる。


泣いたらすっきりするから。だからちょっと泣かせて。また、待つための準備だから。


何時まで待てばいいの?とか言わないよ。思うだけだよ。

寂しくてたまらない時だって一人で耐えてみせたよ。


他の生き物を見つけたり、新しい綺麗な物を見つけたり。

曇り空は一度だって同じじゃ無かったように。

"楽しい"を見つけてみたけど。


ごめん。やっぱり寂しいんだ。


今日は泣きやめないかもしれない。声が枯れるまで泣いてみよう。




ふと、涙ではない温かいものが頬に当たった気がした。

泣きながら顔を上げてみると私の影が目の前に出来ていた。

バッと振り返って空を見上げた。


青空が、見えた。

太陽の光が私に当たった。風が頬を一撫でして髪を攫っていった。


あったかい。


いつの間にか涙が止まっていた。

念願の青空。


やっぱり、好きだなぁ。

こんな青空なら、彼と見たいなぁ。


ツキン、と胸が痛んだ。


馬鹿だなぁ。待ってる途中なのに。

彼はまだ、来ていないのに。


また、涙が浮かんできた。でも、青空は見ていたいから上を向いたまま。


彼が来たら屋根に座っていることも忘れてそのまま飛び降りちゃいそうだ。

でも、今の私は羽があるから飛べるんだ。

驚かせてやろう。


クスリ、と笑って足をばたつかせた。

良かった。涙止まった。

さっきよりは悲しくない。大丈夫。

まだ待てるよ。


今夜は少し夜ふかしをしよう。綺麗な月と星が見れると思うから。

けど、紺色の夜空を観たら寂しさが濃くなるかもしれない。

ちょっと悩み所だなぁ。


でも、やっぱり。

今までの時間を振り返りながら眺めてみよう。



*******************




最近の日課は屋根から景色を見渡すこと。

今日は大きな船が海岸に近づいてきていた。


やっぱり人間は生きていたのかな。私みたいに進化した人いるかな。


なんて思いながら、ここに来るのを待つことにした。


だって、彼がいたら驚かせてやるんだもん。


海からここまではそんなに遠くないし、森と言っても凶暴な動物はそこまでいない。すぐに来るだろう。


と眺めていると、船から人が降りてきた。でも、私のように羽が生えた人はいないようだった。


暫く眺めていると、なにやら言い争っているようだった。金髪の人は何やら焦っている。周りの人は落ち着けと言っている雰囲気。


なんで見えるかって?

なんか身体機能が全体的に上がってたんだよ。


それはそうと。

金髪の人は興奮して何も聞き入れていないようだった。

早く、早くと急かしている様子。

近くの茶髪の人は仕方がないと言うふうに指示を出していた。

そして、金髪と茶髪含め5人が森に入っていった。


やっと、来るのかな。


冷静な自分に少し驚いた。もしかしたら彼がいるかもしれないと、確かに期待しているのに。



*******************



ガチャガチャと金属音がした。


…いつの間にか意識が飛んでいた。下を見下ろすと森から5人が出てくる所だった。

金髪は城の城門に駆け寄って何かを見ているようだった。

茶髪が地面に落ちている私の白い羽を拾い上げて、首をかしげてからおもむろに上を見上げた。

あ、目が合った。


すっごい目を丸くしてる。口も開いてる。

ちょっと間抜けな顔。

まあ、私ってば人間じゃないからね。背中の羽に驚いているんだろう。

少し遅れて茶髪を見やった他の3人もつられて私を見上げた。揃って間抜けな顔をする。

ちょっとおもしろい。

そして、城門を眺めていた金髪が他の4人を見てやっと、私を見た。

彼は目を見開いた。


彼と目が合った瞬間、何とも言えない満足感が湧き上がってきた。

やっと、やっとだ。


何時まで待たせるのかと思ったよ。

何も考えずに飛び降りて彼の元に落ちていく。


彼に触れる直前で羽を広げて衝撃を弱めて抱きつく。


「会いたかった!!」


ああ、やっと会えた。

ずっと、ずっと待ってたんだよ。

色んなことがあったんだよ。


でも、何より貴方に会えて、触れられて。

すごく、すごく嬉しいんだ。


貴方は私との約束をちゃんと覚えているかな。

ぎゅう、と力を込めると抱きしめ返してくれた。

少し擦れて、震えながら彼は言った。


「遅く、なって、、ごめん。」


ほんと、何時まで待たせるつもりだったの?

でも、でもね。もういいんだ。

会えたから。

約束、覚えていてくれてありがとう。


あのね、貴方に会ったら今まで待っていた時間がとても短く感じたんだ。





とても永く、一瞬の時間だった気がしたんだ。






誤字脱字、矛盾点などご指摘お願いします。

感想お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ