魔王討伐
ついに俺たちは、魔王の根城にたどり着いた。
俺たちの平和な生活を突如として身勝手な壊した……あの憎き奴らの首領の住処だ。
あいつらとは最初、共存していた……だが、生存圏を広げるなどといった身勝手な理由で俺たちの土地を勝手に占領、さらに、俺の仲間や家族、そして恋人までもまるでゴミクズのように殺していった、そんなことをした理由は……ただ、「邪魔」だったからだそうだ。
相手は残っていた軍を総動員して、俺たちを迎撃しようと待ち構えている。だが、そんなことは問題ではない。
「もう一息だ! 頑張ろうぜ!」
仲間であり親友でもあるアロー・ヒントラーが俺に呼びかける。ああ、そうだ。もう一息だ。お前の……妹の敵討ちも出来るぞ!
「みんなあ! 行けえええ!」
後ろに控えている仲間たちに叫ぶ。仲間にも俺のように家族や友達を皆殺しにされたりしたものもいる。そうではなくても、みんな、大切な人を必ず一人は失っていた。その瞳には、憎悪の感情がこもっていた。
みんなが待ち構えている軍に向かって突撃する。敵も喊声をあげながら、突進してくる。そして……両軍がぶつかった。
叫び声や剣と剣のぶつかり合う音で、戦場は喧噪としてきた。
俺とアローも魔術を駆使しながらみんなを支援し、斬りかかってきた敵には、直接、剣で対応する。
火矢が飛んできた。飛ばしてきたやつらは……櫓の上の兵士たちのようだ。
「こっちに来るなああ!」
兵士がそう叫んでいる。だが、火矢は、俺の体に当たって折れた。魔術で体を強化しているのだから当然だ。火矢ごときで死ぬようなら、ここまで来られてなんかない。
俺は闇の魔法を唱え、兵士たちを倒すと、戦い続けた。
三時間もすると、敵軍はほぼ壊滅状態になった。それはそうだ、いままで報復のため、必死に強くなってきた俺たちと、たいして戦った経験のない、兵士達とは違う。
俺とアローは仲間たちを率いて、城内に突入した。しばらく魔王のいるはずの玉座の間を目指して進み続けていると、ようやくそれらしき、部屋の前にたどり着いた。
だが、その扉の前には……王の側近らしき者たちが十数人いた。
「よいか? 陛下のために少しでも時間を稼ぐのだ!」
まとめ役らしき、男が咆哮している。側近たちが向かってくる。だが、魔法攻撃ですぐ倒された。あんな奴のために命を懸けるとは……かわいそうな奴らだ。
扉を開ける。すると、慌てて逃げる支度をしている魔王と付き添いの兵士の姿があった。
「魔王め……みんなの仇だあああ!」
付き添いの兵士が慌ててこちらに向かってきたが、一撃で斬り捨てる。
そして俺は、今までのすべての悲しみと憎しみをこめて、魔王を斬った。
魔王の体が真っ二つになる。
「みんなあああ! 魔王、人間の王を倒したぞおおお!」