2 雪村先生がやってきた 前編
「え~みんなに集まってもらったのはほかでもない。今日は重大な発表があるのでみんなに集まってもらったのだ」
「いーよ、そういうのは。早く見せろよ!事情はもう聴いてある」
「・・・分かったよ」
僕らのちょっとした秘密基地に総勢十人が集合した。なぜ集合したか、それはあの袋の中身を今後どのように取り扱うかを決めるために集合したんだ。
あの袋の中身は通常われわれ未成年者が手に入れることができない幻の秘宝。黄金よりも価値がありダイヤモンドよりも輝いていて神様なんかより尊い存在。人はそのような存在のことをエロ本としてくくっていた。しかし僕たちにとってそんなHな本はたぶんどんな本や教科書にもかなわない興味や関心があり何もないところでそれを手に入れようと必死に探し求めていた。そしてようやく僕たちは手に入れたんだ。素晴らしい本、エロ本を。
「お前の好みじゃないのか木下?」
「いや俺はもっと過激的なのがいいんだよ」
「じゃあ三田はどうなの?」
「おれはどっちかっていうと文章にするほうが好きだからさ・・・」
「さすが妄想小説家だ」
木下はこの集団の中ではエロ神様と呼ばれるぐらいの性よ・・・ではなく本に対しての関心が高く集団の中での知識人としての役割である。そして三田は周りの女子からはかっこいいからと言って人気があるが中身は妄想小説家。未成年だから本物は見れないがしかし表現することは自由なのだ。三田の国語力と文章力そして木下の知識でできた小説を我々は何度も読み何度も感動と喜びに包まれた。この二人は我々の集団の中でもずば抜けてすごいやつらなのだ。
「というかさ、山村。おまえこの本どうするんだよ?」
「だからそれを決めるためにここにお前らを集合させたんだろ!」
やっぱし話を理解していなかったようだ。彼らに届いていた情報は山村と奥田が本を拾ったという事だけだった。
「とりあえず俺が考えている案としてはここに浅い穴を掘りスチール缶の中に本を入れて保存。一週間ごとに基地の監視者を決め基地を監視。本を借りるものは監視者の許可を得て借りるというのが案なんだけどどうかな?」
「いいんじゃないのかい?まぁ俺らは読めればいいんだよ、とりあえず」
「先生たちに見つかんないかなぁ?」
「大丈夫だろ。ここまで目は届かなさ」
「そういや新しい先生が来たらしいぞ」
「なんでこんな時期に先生が来るんだよ!」
「知るかよ。でも来たって聞いたぞ」
「それじゃ次の登校日にでも顔を拝みに行こうじゃないか」
「えっ、サボろうと思ってたのに」
「そんなことしてるから藤田はダメ人間なんだよ」
ダメ人間藤田。何をやってもダメなやつ。それぐらいしか言いようがない。何かとついていないやつだ。
後編に続く・・・・・