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異世界で恋に落ちました  作者: 藤野
第十二話
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第1話

 ゆっくりと体を温かい湯に浸す。芯まで届くような心地よさに、自然と詰めてしまっていた息が抜けた。広々とした湯船――というか浴場は、両手両足を投げ出しても壁に触れることはない。泳ぐことだって余裕でできる広い造りになっている。………さすがにしないけど。

 ああ、そういえばお風呂の入り方についても一悶着あったんだっけ。グランのところで初めて知った、驚愕の新事実。あのときのシエラはいかにも当たり前ですって顔してたし、リーガさんに後々確認した時もあっさり頷かれたから、こちらでは本当にあの入り方が当たり前らしい。規模が違うだけで欧風……なのかな?お風呂についてもパトリシアが伝えたなら理解できる、かもしれない。納得するのは無理だけど。お風呂は浸かってなんぼでしょ!日本のお風呂最高っ!

 だだっ広い浴室にひとりっきりの今は、嫌に独り言が増える。一応言っておくけどボッチではないからね!今夜はパーティーが開催されるから皆お仕事が忙しいだけで、決して私がボッチってわけでは断じてないからね!

 ルーグさんに報告に来ていたヘルバルトさんが言うには、近年大きな戦争も天災もなく、記録的とまではいかないまでも豊作がつづいていて、国王陛下ルーグさんも倹約家なんだとか。つまりお金が有り余っているらしいということ。慰労も兼ねて貯まりに貯まったものを消費するいい機会なんだって。お金持ちってよくわからないね。

 わからないといえば、エリザさんとローザさんだ。パーティー開催、私出席。この二項目を聞いた時点で喜び勇んでルーグさんの執務室を飛び出していったと通りすがりのハンナが言ってた。あ、ハンナはお針子さんです。

 なんで二人がそんなオーバーリアクションを披露したのかというと、私を着飾りたいからなんだそうで。

 私なんて着飾るより二人が着飾ったほうが見栄えするし目の保養になると思う。実際そう訴えたら早口すぎて何言ってるのか聞こえない速度でよくわからないことを延々語られてしまったのはしょっぱい思い出だ。二人はどうやら本当はお風呂からなにから全部プロデュースしたかったそうなのだが、私の精神衛生を考慮して丁重にお断り申し上げました。こんな規模の湯船で欧風入浴法とかやめて。ほんとやめて。頼み込んで頼み込んでようやく、しぶしぶ、不承不承に承諾をもらった時の安心感と達成感は忘れられそうにない。

 おっと、話が逸れた。そんな私を美化フィルター越しに見ている二人が、じゃあ今は何をいているのかというと、お風呂上りのエステやマッサージ、ドレスにメイクにヘアセットにと有能メイドっぷりをいかんなく発揮している。つまり、私の死亡フラグがビンビンに立っちゃってるわけだ。

 有能メイドコンビは普段は甘やかしてくれるんだけど、締めるところはきっちり締める。妥協?なにそれ、美味しいの?な人たちだ。それを踏まえて考察すると………私、今度こそ内臓が口から飛び出るかもしれない……。ああ、恐ろしい……。

 ぶんぶん考えを打ち払うように思いっきり頭を振ると、毛先がパシャパシャ水面を叩いた。異世界こっちに来てからもうどのくらい経ったのかわからないけど、髪の毛も大分伸びたと思う。周りの献身的なお手入れのおかげで傷んだりとか全然してないけどね。お肌とかすごいよ、ニキビ跡まで消えちゃったんだから。いつか大騒ぎした体重も、今では元に戻って一安心。良いこと尽くしだ。

 何となく思い返してみたけど、そんなに長くないはずなのに内容盛り沢山だよねぇ。これにプラスしてトリップに恋に誘拐にドラゴン遭遇、そしてまさかのパーティー参加。こんな波乱万丈、絶対誰も想像したこともないよね。体験してみたいって言う人も絶対いないだろうけど。

 でも、それでも楽しいと思えてきてるあたり、私もだんだんこっちの感覚に染まってきてるんだろうね。それがちょっとだけ、嬉しかったりした。

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