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異世界で恋に落ちました  作者: 藤野
第十一話
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4

 「酷い方だ……」


 ルーグさんが不意に呟く。言われても仕方のないことだけど、やっぱり心が痛い。私がこの人を悲しませてるということが、否応無く苛んでくる。

 ルーグさんはきっと気づいてる。私の気持ちにも、怯えにも。


 「そうですよ。私は酷いんです。………私を、嫌いになりますか」


 自分で質問しておきながら、その答えは聞きたくない。どこまでもわがままな私。

 自嘲する私を、ルーグさんは抱きしめたままだ。視線がかち合うことはない。


 「嫌いだと、一言そう仰ってくれたなら……」


 続かない言葉は、もしそうだとしても何も変わらないとわかっているからだろう。


 「限りある時でもいいと、言っても貴女は頷いてくれないのでしょうね」


 本当に、酷い方だ。

 そう言うルーグさんの声は少しだけど震えていた。

 神様なんてものを信じたことはないし、きっとこれからも無いだろうけど。もし本当に、そんな存在がいたのなら。神様、私はあなたを怨むよ。ずっと、心から。


 「ルーグさん…」

 「貴女の我儘を、受け入れましょう。でも私の我儘も、聞いてくださいね」


 ルーグさんの我儘?いつも受け入れてくれるばかりだった人が珍しい。

 どんなことを要求されるのかと、少し恐々としながらも続きを待った。


 「例え、ダメだと言われてもーー貴女を想い続けます」


 これからもずっと。

 そんなことを我儘と言ってしまうこの人に、熱いものがせり上げてくる。


 誰かに言えば、くだらないと一蹴されるかもしれない。もしくは、夢の見過ぎだと一笑されるかもしれない。

 でも、私にとっては最高の恋だと、胸を張って言えるんだよ。


 「ごめんね、ルーグさん」


 最後まで謝ってばかりの私に、ルーグさんが弱々しく笑みを刻んだ。


 「夜に、兵達の労わりも兼ねてパーティーを催します。ーーその時、私と踊って頂けませんか」

 「踊るって、ダンス?」


 問い返す私にルーグさんが頷く。

 どうしよう。私、ダンスなんて踊れないのに。

 頷けない私に、揺れてるだけでも案外様になりますから、と追い打ちがかけられる。


 「足、踏んでも怒らないでくれます?」

 「さつき様になら喜んで踏まれますよ」


 ………ルーグさん、それ違う意味に聞こえるよ。

 ルーグさんの天然に堪らずに笑う。ルーグさんはわからないと首を傾げて、それが余計おかしくて笑えた。

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