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「酷い方だ……」
ルーグさんが不意に呟く。言われても仕方のないことだけど、やっぱり心が痛い。私がこの人を悲しませてるということが、否応無く苛んでくる。
ルーグさんはきっと気づいてる。私の気持ちにも、怯えにも。
「そうですよ。私は酷いんです。………私を、嫌いになりますか」
自分で質問しておきながら、その答えは聞きたくない。どこまでもわがままな私。
自嘲する私を、ルーグさんは抱きしめたままだ。視線がかち合うことはない。
「嫌いだと、一言そう仰ってくれたなら……」
続かない言葉は、もしそうだとしても何も変わらないとわかっているからだろう。
「限りある時でもいいと、言っても貴女は頷いてくれないのでしょうね」
本当に、酷い方だ。
そう言うルーグさんの声は少しだけど震えていた。
神様なんてものを信じたことはないし、きっとこれからも無いだろうけど。もし本当に、そんな存在がいたのなら。神様、私はあなたを怨むよ。ずっと、心から。
「ルーグさん…」
「貴女の我儘を、受け入れましょう。でも私の我儘も、聞いてくださいね」
ルーグさんの我儘?いつも受け入れてくれるばかりだった人が珍しい。
どんなことを要求されるのかと、少し恐々としながらも続きを待った。
「例え、ダメだと言われてもーー貴女を想い続けます」
これからもずっと。
そんなことを我儘と言ってしまうこの人に、熱いものがせり上げてくる。
誰かに言えば、くだらないと一蹴されるかもしれない。もしくは、夢の見過ぎだと一笑されるかもしれない。
でも、私にとっては最高の恋だと、胸を張って言えるんだよ。
「ごめんね、ルーグさん」
最後まで謝ってばかりの私に、ルーグさんが弱々しく笑みを刻んだ。
「夜に、兵達の労わりも兼ねてパーティーを催します。ーーその時、私と踊って頂けませんか」
「踊るって、ダンス?」
問い返す私にルーグさんが頷く。
どうしよう。私、ダンスなんて踊れないのに。
頷けない私に、揺れてるだけでも案外様になりますから、と追い打ちがかけられる。
「足、踏んでも怒らないでくれます?」
「さつき様になら喜んで踏まれますよ」
………ルーグさん、それ違う意味に聞こえるよ。
ルーグさんの天然に堪らずに笑う。ルーグさんはわからないと首を傾げて、それが余計おかしくて笑えた。




