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ペラペラとわけのわからない美辞麗句を並べ立てるルーグさんに、ふと気づく。
ルーグさん、ちょっと日本語ペラペラすぎない?
ルーグさんは、見た目だけはそれはもう素晴らしい美人さんだ。そして、見るからに白色人種。伯爵だとか、名前もどう聞いても西洋風。日本人要素が見当たらない。
なのに、どうしてこうも日本語が堪能なんだろう?
「ルーグさんって、もしかして日本大好き!な方なんですか?」
純日本人な私をベタ褒めするし、とちょっと聞いてみる。
日本ラブ!ビバ日本!!な人なら日本語喋れたりも多分不思議じゃないし、私を美人とか言うのもまだわかる、気がしないこともない。………いや、やっぱわかんないけど、納得はできそう。
だったのに。
「ニホン?固有名詞のようですが……何ですか、それは?」
「は?」
まさかの日本を知らない、だと!?
んなバカな!!
「やっだなぁルーグさん、日本語喋ってるのに日本を知らないとか、冗談にもなりませんよ」
もう、残念なイケメンがまさか冗談まで残念だなんて!笑いとりたいならもうちょっと考えなきゃ。
それでもおひねり代わりに笑ってたら、ルーグさんはキョトンって顔をして。
「私が使ってるのはトリシア語ですよ?」
一気に、血の気が引いた。
「ルーグさんったら、もうそんな冗談いりませんよ!日本語でしょ?」
トリシア語?なにそれ知らない。そんなのあるの?何処の国の言語?
ぐるぐる混乱するのを笑い飛ばすことで騙す。
冗談だ、冗談。これはルーグさんの残念な冗談なんだ。
言い聞かせても震え出して止まらない体。
それに気づかないで、ルーグさんはもう一度繰り返す。
「冗談ではありませんよ、私が使ってるのはトリシア語で、この聖パトラシャーナ王国の公用語です。ニホンゴとやらではありませんよ」
何言ってんの。
吐いたはずの言葉は声には出なかった。