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それにしても意外なのは、ルーグさんだけじゃなくてグランまで子孫だということ。
だって二人とも、顔も性格も全然違うじゃん。表と裏みたいで。
ルーグさんは儚げ美人というか正統派白王子様!って感じだけど、グランはどっちかっていうと軍人っぽい。それも将軍とか軍師とか、上で指示出す系の。悪の黒幕的なやつ。
あ、でも共通点も確かにあるかも。甲斐甲斐しいというか、やけにまめなところ。あと、方向性は違うけど天女信仰染みてるところ。
うーん、こうなると微妙だな。似てるのか似てないのか、わかんなくなって来た。
「さつき様、そろそろベッドへお戻りになりますか?」
「あ、はい。お願いします」
レモンパイも食べ終えて、のんびりソファーで寛いでいたところに声をかけられた。シエラは使い終わった食器類を下げてる。
私はまたもリーガさんにお姫様抱っこされそうになったけど、動きたいからと手だけ貸してもらってのんびりベッドへ移動した。よろめくふりしながらベッドへ登るのは私の演技力では表現するのになかなか辛いものがあった。
それを見ていられなくなったのか、リーガさんがいつものように私を軽々と持ち上げたところで、ノックも無しにドアが開けられた。うげ、と嫌な顔が隠されることなく乱入者に晒される。
乱入者もといグランはそれを鼻で笑って、目線だけでシエラとルーグさんに合図した。それを受けたシエラがカートを押しながらそそくさと部屋を出て行って、リーガさんは私をベッドの上に下してからグランに頭を下げて出て行った。
二人っきりのこの状況。長いことここに居るわけじゃないけど、こんなことにももう慣れた。
何の用?なんて意味のない問いを投げかける。グランはいつものようにそれを無視して、当たり前のようにベッドの端に腰を下した。
「あんたも物好きなヤツだね」
嫌味をたっぷり込めて言ってやる。グランはそれを小馬鹿にしたように笑った。こういういけすかない所が余計嫌なんだって、なんでわかんないんだか。
「ああ、そういえば。アンタもパトリシアの子孫なんだってね」
グランの眉間がぴくりと動きを見せた。パトリシアの話題はこいつにも効果有りらしい。どいつもこいつも、知らぬが仏とはよく言ったものだよ、まったく。




