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でも、よく崖から落ちて生きてたな、私。
運良く下に何かクッションがあったのかな?実はそんなに高くなかったとか?とにかく助かって本当によかった。
生きてるってやっぱりいいね。そうまとめたところで、ドアノブの回る音がして、人が入ってきた。
金髪で濃い碧眼の白人さん。しかも天使ですかって聞きたくなるくらい美人。本当美人。目の保養ってこういう人のこというんだなー。
しかも着てる服がもう、素晴らしい!緑色の軍服!肩章とかもがっちりしてて立派!これはもう萌えるしかない!私のツボにストレートですよ!!
惚れ惚れと見つめてたら、私が起きてるのに気づいた美人さんが、にっこり。
背景に花が咲き乱れて見えました。やばい鼻血出そう。
「よかった!もう、目を開けてくださらないのかと……」
目尻に宝石みたいに綺麗な涙を浮かべて笑顔で駆け寄ってくる軍服美人さんが、本当によかったと何度も繰り返して私の左手を握る。
いた、痛いっ。自分で動かしたわけじゃないのに筋肉痛痛い。
あんまりの痛みに私まで涙目になって、そしたら美人さんは真っ赤になった。え、なに?
「え、っと、助けてくれて?どうもありがとうございます。それで、あなた、誰ですか?」
この人が助けてくれたのかはわからないけどひとまずお礼を言って、まずは名前を聞いてみる。いつまでも美人さん呼びじゃ悪いもんね、いくら本当のことでも。
「私は、ヴァルガン伯爵家の当主で、ルーグ=ヴァルガンと申します。天女様のお名前も教えて頂けますか?」
「……も、森山さつき、です」
思わず答えるのを躊躇ったのは仕方ない。だって、この人何言ってんの?
とりあえず、美人さんがルーグさんっていうのはわかった。でもさ、後おかしくない?おかしいよ。何さ、伯爵って。しかもこの人私のこと見て天女とか言ったよね!?え、この人大丈夫!?主に頭!
こんなに美人さんなのに、ルーグさん電波なの?
痛い人を見る目そのままにルーグさんを見る。そうしたらルーグさんは今度はどんな痛い考え方をしたのか。
「そっ、そんなに熱い目で見つめられては恥ずかしいです、天女様…っ」
身悶えながら白い頬を薄紅に染めた。
熱くないよ、冷たいよ。そしてまた言ったね、天女って。私天女じゃないよどこにでもいる平々凡々な女子大生だよ。
ああ、この体が動くなら今すぐここから逃げ出すのに。




