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異世界で恋に落ちました  作者: 藤野
第七話
67/134

7

 笑ってばかりいると、ぐきゅう…と笑い声以外の音がした。言わずもがな、私のお腹。怪物の鳴き声ではありませんので悪しからず。


 「あー……お腹減っちゃったぁ……」


 あははと笑って誤魔化せば、シエラはあらあら、って小さい子にするみたいに笑った。

 ワゴンを押して私の隣まで持ってくると、ワゴンから板を伸ばして簡易テーブルを作る。これは便利だなーってちょっとした感動を味わっていると、目の前にコトンと小ぶりの土鍋が置かれた。ミトンを被せた手で、土鍋の蓋が開けられる。もう湯気は立っていないけれど温かいとわかるリゾットが姿を現した。



 ………………が。



 「シエラ、これ…は………?」


 頬が引き攣るのを自覚しながらも、明らかに異様な目の前のブツを指差す。シエラはきょとんとしながら、当然のように答えた。


 「目玉もどきですよ?これは()いだばかりですから鮮度もバッチリです!」

 「へ、へぇ……」


 私はさらに顔を引き攣らせた。


 トマトがベースなのか全体的に赤い土鍋の中。一口サイズに切られた、5種類はある野菜。

 その中でどうしようもなく目を惹かれる、“目玉もどき”なるもの。

 なんとも安直な名前だ。その名前の通り、どこからどう見ても動物の…………いやいやいや!ほら、シエラ「捥いだ」って言ったし!捥ぐってことは木の実だよね?木の実だよねっ!?いやでも、どうなんだろ……?ってああ!私のバカ!!疑問に思っちゃダメでしょうっ!?


 どうしよう、ものすっごく食べたくない!!カニバリズムは断固拒否したい!せめて、せめて木の実だっていう言質が欲しい!!


 泣き喚きたいのを必死に堪えて、シエラを顧みる。


 「………これ、木の実だよね?」

 「? 当たり前じゃないですか」


 けろりと肯定してくれたシエラが、かつてないほど神々しく思えた。当たり前じゃない、当たり前じゃないよ!

 内心でヤキモキしながら、木の実ならと覚悟を決めてスプーンで掬う。


 大丈夫、これは木の実。木の実だから。


 言い聞かせて、「頂きます!」の掛け声とともに、ままよ!とスプーンまで(かじ)る覚悟で口に突っ込んだ。


 「………………あれ?」

 「どうかなさいましたか?」

 「いや、あの……意外に美味しいなー、と」


 いや、本気で私はびっくりしてる。美味しいよ、目玉もどき。グロいけど。グロいけど!

 ブニって感触に一瞬気が遠のいたけど、そのあとのコリコリって感触が小気味良い。多分これ自体の味は強くないんだろうけど、スープや他の野菜の旨味が染み込んでて美味しい。



 やるじゃないか、目玉もどき。

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