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のっそのっそと歩いて揺られて。その最中に怪しまれない程度に見回してみる。
ここもルーグさんのところと同じで、やたらと広い。違いは、ルーグさんのところはシンプルに絵画が飾られているだけだったのに対して、こっちはプラスして甲冑だとかも廊下に並べられている。しかも、絵もなんだか陰鬱。総じて、建物の中も暗く感じた。
連れて来られたお風呂も、やっぱり広かった。泳げる広さの家庭風呂………うん。
遠い目をする私を抱えてイケマッチョが私を湯船に浸からせる。お湯で服が纏わり付いて気持ち悪い。思わず嫌な顔をしていると、イケマッチョ三人衆は出て行った。
「ではさつき様、お服を脱がせていきますね」
「あ、うん。お願いします」
二人だけになって、ようやくシエラが私の服を脱がせていく。邪魔な物が取り払われていくのは嬉しいんだけど、やっぱり裸を見られるのは恥ずかしい。ぎしぎし軋む体を無理やり動かして、少しでも体を隠す。
「あらあら。まずは御髪を失礼致しますね」
シエラが小さく笑って、お湯を張った桶に私の髪を浸した。ゆっくり髪が濡らされて重みを増していく。シャンプーが泡立てられて、ゆっくりと指の腹で優しく洗われるのが気持ちいい。
美容院に来たみたい。絶妙な加減で頭皮を刺激されて、いい気分。
「お痒いところはございませんか?」
「なーいでーす……」
力の抜け切った声で返事したら、また笑われてしまった。仕方ないじゃないか、気持ちいいんだから。
私がうっとりしてるうちにもシエラはてきぱきと進めていく。 コンディショナーかトリートメントかを髪に馴染ませて、ひとまずとそれを纏めて上に上げられた。
それからざばざばとスカートをたくし上げてシエラもお風呂に入ってきた。ギョッとしていると、シエラの手が伸びてきた。その手には、どこからどう見てもボディウォッシュ用のブラシ。
待って。ちょっと待って。ま、まさか……
「シエラ、もしかして、このまま体洗うの……?」
泡とか全部湯船に入っちゃうよ?いいの?いいわけないよね?ね?
どうか否定してと願う私の心は届かず、シエラはもちろんですと、まずは左腕にブラシを当てた。ゆっくりと泡立ったそれが動いて、流れ落ちた泡が湯面に広がっていく。
ああ、大量のお湯が汚れていく……。もったいない、もったいないよ……。
罪悪感に項垂れる私を不思議そうに見ながら、シエラはどんどんブラシを当てていく。
気持ちはいい。気持ちはいいけど、心が痛いよ、シエラ……。
「さつき様は、本当にお美しいですわね。どこもかしこも……」
恍惚とシエラが嘆息する。まじまじと見つめられて、羞恥心で死ねそうだ。
「あの、シエラ……?恥ずかしい、から、ね?」
「ああ、そうですわね、さつき様はとても恥ずかしがり屋さんですから……。でも本当に、お美しい……」
なんだ、この羞恥プレイ。やめてよ、私そんな趣味ないから。
体を捩ってささやかながら抵抗してみる。でもそれさえもシエラにはツボのよう。変なスイッチが入ったシエラに言葉責めにされながら、私は羞恥まみれのバスタイムを耐えに耐えるハメになった。
自分で望んだはずなのに、今すぐにでも出たい心境です。解せん。




