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異世界で恋に落ちました  作者: 藤野
第七話
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2

 「きれーだなー……」


 だいぶ落ち着いてきた呼吸。それでも私はまだ仰向けになったままだ。

床に大の字になって見る月は、嫌味なくらいにまんまるで綺麗。星が競い合うようにして輝いてるのも、自分のみすぼらしさを突きつけられるようで惨めに感じる。

 それでも、空を見上げるのは辞めたくなかった。

 ルーグさんも見てるのかな、なんて考えてみる。悲劇のヒロインを気取るつもりはないけれど、このくらいはいいでしょ。


 「みんな、今頃何してるのかなぁ……」


 思い浮かべるのはルーグさんや、ローザさんやエリザさんや、他の使用人さんたち。きっとみんな、時間的にもう寝ちゃってるんだろうな。私がいなくなってること……気づいてくれてるかなぁ。

 さすがにそれは気づいてるか。ルーグさんもみんなも、まめな人たちだもん。そんでもってすごく優しい良い人たちだから、心配してくれるんだろうな。


 「っは……やだ、私ってばメンタル弱過ぎっしょ………」


 じわりと滲んだ視界。一秒も保たずに水の膜はこめかみを伝ってカーペットに吸い込まれていった。

 まだたったの二日しか経っていない。経っていないのに、すごく寂しい。会いたい。


 ぐっと腕に力を入れて上体を起こす。壁に爪を立てて、笑う膝で無理やり立ち上がった。

 大丈夫。まだやれる。

 何度も自分に言い聞かせた。

 絶対に帰るんだ。ルーグさんや、みんながいる、優しいあの場所に。


 「負け、てたまるか……っ見てろよ、ムッツリ変態野郎……!」


 キッと扉を睨みつけて、またスクワットを再開する。

 静かな辺りのどこか遠くの森から、フクロウの啼く声が聞こえた。

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