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「さつき様……私は、あなたの力にはなれませんか」
「え?ルーグさん、何言って……?」
唐突な言葉に戸惑う。力になれないなんて、そんなことあるわけない。この世界にきてからずっと、私はルーグさんに頼ってばっかりなのに。
どうしてそんなことを言い出したのかわからなくて困惑していると、ルーグさんは何を思ったのか私を引き寄せて抱きしめてきた。びっくりしてあわあわとしたら余計にぎゅうってされて、これ以上は苦しくなっちゃうと思って無理やり動くのを止めた。
「ルーグ、さん……」
恥ずかしいよ、伝えてもルーグさんは離してくれなくて、私の肩口に額を押し付けたままだ。
「どうして、泣いていらしたんですか……」
そんなに寂しかったですか。
ぽつりと、ルーグさんが呟いた。最初は何のことかと思ったけど、すぐにあの四阿でのことかと思い至る。
ああ、そうだ。話さなきゃ。証拠なんて何も無いけれど、パトリシアに会ったんだよ、って。ご先祖様だからかな、ルーグさんはパトリシアの事が大好きみたいだから、きっと喜ぶだろうな。
喜んでほしい、喜ぶ顔がみたい。そう思うのに、一方で私は別の事を思って胸が痛んだ。ちくん、ちくんと疼くのに気づかない振りをして、あのね、と話を切り出す。
「……パトリシアに、ね。会ったの……夢でだけど………」
私の言葉に、ルーグさんがばっと顔を上げた。私の両肩を掴む手にはちょっと痛いかなと思うほどの力が加えられている。ルーグさんの顔は、ひたすらに驚いたと言っていた。
「聖パトリシア様に……?」
いったいなんで、どうやって、と完全に意識をそちらに向けるルーグさんに、自分で切り出したことなのに悲しくなる。それでも伝えることにしたのだからと押し殺して、私は説明の為に口を開いた。
ルーグさんは、一言一句聞き漏らしてなるものかとばかりに、真剣な顔をして聞いていた。それが余計に辛かった。




