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気がつけば、真っ白な空間にいた。右も左も、上も下もない。ただ“私”という存在があるだけの空間。
手を伸ばしてみても何かに触れることはなく、閉じ込められているわけでもないから歩いてみた。時計がないからどれだけ歩いたかわからないけど、歩いても歩いても見えるものは変わらないし、体に疲れを感じることもない。
私はようやく、ここが夢の中じゃないかと思い至った。
「せーいかーい。なぁに、あなたノロマねぇ。夢かどうかくらいさっさと見分けなさいよね」
「えっ、だ、だれ!?」
誰もいないと思っていたのに急に私以外の声がして、心臓が止まるかと思った。慌てて振り返ってみれば、………わぁお、超美人。ルーグさんやお屋敷の人たちと並んでも見劣りしない、それどころか堂々と胸を張れる美女がそこにいた。
綺麗に結われた髪は染めた色とは全然違う、天然のブロンドカラー。白人特有の肌はシミも傷跡も見当たらない。
水色の瞳は強気な光を宿していて、銀を散らしたようなという表現がよく似合う。
りんごみたいに真っ赤な唇は扇情的なほど艶めいている。
細身の体は抱き締めたら折れてしまうのではと心配になるほどで、でもなだらかな曲線と豊満とまではいかないまでも豊かな女性の象徴によってそれはさらに強調されていた。
何度でも言おう、美女だ。凄く綺麗なお姉様がいる。 いや、性格からして女王様だ。 世の一部の男が発狂しそう。
「気色悪いこと考えないでちょうだい。嫌よ、そんな変態共なんて見るのも嫌。ていうかあなたバカ?まだわからないの?本当にバカね」
「ちょっと人のことバカバカ言わないでよ!確かに頭よく無いけど平均はあるわよ!」
「あー、やだやだ。世の中の怠惰な人ってみんなそう言うのよね。平均あるから何なのよ、ん?」
くっ、くそぅ!言い返せない……!
でも、そういうあんたはどうなのよ。人のこと散々言っといて、自分だってそうなんじゃないの?
「は?一緒にしないでよ。バカじゃモデルなんてやっていけないの、わかる?」
へー、この人モデルなんだー。美人だもんねー。うん、違和感ないかも。
…………………って、あれ?
ねえ、私さっきから心読まれてない?言葉に出してないはずのことにすら答えられてる気がするんだけど………そんなまさか、ねぇ?
「そのまさか、よ。あなたって本当に鈍いのね。そんなんで社会に出てやっていけるの?」
「えっ?ええええええ!?待って待って待って!後半耳痛いけど前半!なんなのいったい!?超能力!?あなた超能力者!?」
「うるっさいわねー、違うわよ。ここは現実じゃないんだから、このくらいあったって不思議じゃないでしょ」
現実だったらどういう仕組みなのか詳しく調べたいところだけど、と知識欲を垣間見せた女王様はどうやら本当に頭がいいらしい。天は二物を与えずって大嘘じゃんね。ルーグさんたちといい、この女王様といい。
「ルーグルーグって、さっきから誰よ?それと、私の名前はパトリシアよ!パトリシア・アシュレイ!わかったらその女王様っていうのやめてちょうだい!」
「あ、私は森山さつきです、初めましてパトリシ………パトリシア!?」
え!?まじで!?本当に!?本当の本当にパトリシア!?
あの、高飛車で傲慢で、聖人なんて祭り上げられちゃってる馬鹿者のワガママ女王様の癖してジャンさんと大恋愛繰り広げた、あのパトリシア!?
………どうしよう、すごい不安になってきた。ジャンさん、パトリシアの見た目に騙されてない?
「失礼ね!ジャンは私の性格なんて知ってたわよ!っもう、全然話が進まないじゃない!」
「え?話?」
なんの?と素直に尋ねたのに、あなたは黙ってまず私の話を聞きなさい!って怒鳴られた。 なにも怒らなくてもいいのにね。パトリシア、カルシウム不足なの?煮干しがいいらしいよ、後で教えてあげよう。




