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異世界で恋に落ちました  作者: 藤野
第五話
40/134

7

 美人さんにちやほや至れり尽くせりとされるのは、それはもう天にも昇る気持ちだと、私も最初はそう思ったよ。そう、最初は。

 でも、次からはね、気づいちゃったんだよ。二人が私を挟んでいがみ合ってることに。

 気づいてからは、そんなこと当然思えるはずもなくて、バチバチ火花散らしてるのに顔は思わず見惚れてしまうほど綺麗な笑顔を浮かべてる二人の冷戦に巻き込まれませんようにと叶わない事を願いながら身を縮こまらせてます。美人さんが怒ると怖いって本当なんだよ。


 ルーグさんが持ってきたのは、ラルゴやユスラを天日(てんぴ)干ししたものーーつまり、ドライフルーツだ。もともと甘い果物だけど、それがさらに甘みを増していて、でも嫌な甘さじゃないから飽きがこない。しかも裂いてお茶に入れると砂糖の代わりにもなる。お茶に砂糖は入れない派の私もこの甘さは好きだった。だから今日もそうやって糖分を補給。お茶を飲み干した後は沈めたドライフルーツを食べて、ふと気づいた。気づいてしまった。


 ーー私、食い道楽ばっかりで運動してなくない?


 一気に血の気が引いた。

 生まれてから今までずっとインドア派だった私は、運動部のように体重の増減は激しくないけれど、増えた分の体重をなかなか落とせないのだ。だから定期的に走ってみたりストレッチしたりと体を動かしていたのに、この世界にやってきてからは全然していない。強いて言うなら初日のあの遭難くらいだ。

 冷や汗を流し出した私に、冷戦を繰り広げていた二人がぴたりと口喧嘩をやめた。


 「ルーグさん」

 「は、はい。なんでしょう?」


 いつになく低い私の声に二人は冷や汗を滲ませる。私は目つきを強くしてルーグさんに向き合った。


 「外出許可ください。お庭で十分ですから、今すぐ、早急に」


 異論は認めません!

 はっきりと言い切る。お世話になっている身でつくづく我儘(わがまま)だと我ながら思うけど、なりふりなんて構って居られない。


 贅肉(ぜいにく)は乙女の敵!


 私の頭にはそれしかなかった。


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