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私とローザさんとの間に無理矢理腕を差し込んで、力任せに引き剥がされる。そのままルーグさんの腕の中に閉じ込められて、嫌だと暴れても放してもらえない。
「ローザ、下がりなさい」
「っや、ルーグさん!」
ローザさんに手を伸ばしてもその腕さえ掴まれて押さえ込まれる。ローザさんは躊躇ってくれたけれど、ルーグさんに「何度も同じ事を言わせるな」と睨まれて、退室を余儀無くされた。
部屋を出る時のローザさんはすごく申し訳ないと顔に出ていて、私のせいでこんなことになったのに気遣ってくれる彼女に私の方が申し訳無いと罪悪感が湧いた。
パタリと音を立てて閉じた扉。
それを確認してから、ルーグさんは私の腕を引っ張り歩き出した。遠慮無く力の込められる握られた場所が痛くて、放してと言葉に出しても聞き入れてもらえない。ずっと無言のままで、それに余計恐怖を煽られながら私たちも部屋を出た。
行き先もわからないまま、ただ着いて行くしかない状況。その果てで、乱暴に開けられた扉の向こうに放り込まれた。
カーテンが締め切られた薄暗い空間。勢いに従って倒れ込んだその先は柔らかく、ギシリとスプリングの軋む音がして、広さからそこがベッドの上だと初めて知った。
ルーグさんは扉の傍に立ったままだ。どんな顔をしているのかはわからない。視認できるほどの明るさは無く、そして彼が俯いているから。
せめて状況を把握しようと室内を見回す。
四方は石壁に囲まれていて、扉は入ってきた一つだけ。私のいるベッドはその扉から離れている。家具はベッド脇のサイドチェストと、その上に置かれたヘッドランプ。それから、少し離れたところに大きな本棚が一つと、その向こうに石壁にはめ込まれた窓が一つ。
逃げ道がない。そう認識してしまって、知らなければ良かったと後悔した。
(怖い……)
こつり、ルーグさんが踏み出す。その音に大袈裟なほどびくついて、体が震えていることを自覚した。
「ルーグ、さん……?」
声まで震えた。
お願い、何か言って。怖いよ。
願ってもルーグさんがそれに応えることは無くて、狭まる距離にまた怯えて後ずさった。ベッドメイクされたそこで、シーツを巻き込んでシワを作っていく。普通よりも広いが限定されたスペースはすぐに果てを迎えて、冷たく硬い感触が服越しに背中に伝わった。




