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異世界で恋に落ちました  作者: 藤野
第三話
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4

 「さつき様、お菓子をお持ち致しました」

 「わっ、いつもありがとうございます!」


 コンコンと煩くない程度のノックの後でローザさんが入ってきた。

 ローザさんは、いまや私専属のメイドさんだ。何がわからないかもわからない私だから、ルーグさんが付けてくれた。ちなみにルーグさんの専属はエリザさんが兼任してる。メイド長さんなんだって言ってた。

 ローザさんは、一緒にいて疲れないから好き。ルーグさんもエリザさんも、他の人たちももちろんみんな優しいし大好きなんだけど、ローザさんは一緒にいて一番落ち着くの。

 ローザさんは、他の人たちみたいに私のことを過剰に褒めちぎったりしない。価値観の違いなんだからと何度自分に言い聞かせても虚しくなっていたから、気づいてくれたのかもしれない。そんなローザさんの“普通”な接し方がすごくありがたいんだ。


 「本日のお菓子はユスラの果汁で作ったゼリーでございます」


 お茶もお淹れしますね、という言葉を添えて目の前に置かれたのは、大きめの皿に乗せられたルビー色のぷるんと瑞々しいゼリーだ。

 ユスラはグレープフルーツによく似た果物で、味はそれにイチゴを足した感じ。酸味よりも甘みの方が強くて、でも爽やかで美味しい。ゼリーの中にはパインだとかの馴染み深いフルーツが浮かんでいて、見た目も涼しげだ。


 「ありがとうございまーす!」


 ナイフを持って、ゼリーを半分に切り分ける。ゼリーをなんで、って思うかもしれないけど、これは最近では当たり前だったりする。

 ローザさんは、毎日違うお菓子を持ってきてくれる。それはルーグさんが、私を外に出してあげられないから、せめてもの楽しみにって配慮してくれてると教えて貰った。

 お世話になってばかりの私にそんなに気を使わなくてもいいのにね。

 ルーグさんに言ったら、気に入りませんか?ってすごく悲しそうにされてしまって、そんなことないとし必死で弁解したのは記憶に新しい。本当のことだけど、どうしてこんなに甘やかしてくれるのかわからなくて困る。

 どうしてと一度正直に聞いてみたことがあるんだけど、その時今度はルーグさんが困った顔をした。


 「私は自分がしたいことをしてるだけですよ」


 そう言ったルーグさんがわからなかった。


 かちゃりと音がして、自分の手が止まっていた事に気づいた。慌ててナイフとスプーンを駆使(くし)して、半分に切ったそれをできるだけ崩さないようにもう一つの皿に移す。

 これは、ローザさんの分。

 私専属と化してるローザさんだけど、メイドさんとしての本来のお仕事もあるからすごく忙しい。それを知ってるのに何もしてない私だけがのうのうとお菓子を食べてるなんてできなくて、でもルーグさんの優しさも無碍(むげ)にはできないし、美味しいもの食べたいし。

 じゃあどうしたらいいかな、って悩んだ結果が、二人で食べればいいという考え。

 毎日のお菓子はただでさえちょっとぽっちゃり気味な私を余計肥え太らせると気になってたし、疲れた時には甘いものが一番の薬。私についている時はローザさんは私優先だから、お菓子を食べてる間にローザさんも休憩できて一石二鳥だ。

 私も美味しいお茶とお菓子を楽しみながら美人さんとお話もできるから、どちらにも損害はない。はず。

 これだ!ってはしゃいだ私を、ローザさんは唖然として見てたけど。


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