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「エリザ、さつき様を」
何を思ったのか私をメイドさんに、もといエリザさんに差し出すルーグさん。エリザさんは心得たとばかりに近くの棚の空いてる部分にランタンを置いて、私達に向かって両腕を差し出した。
え、何する気?
まさかエリザさんに私を抱えさせようなんて無茶考えてるわけじゃないよね?そうだよね、だってエリザさんめっちゃ細いもん!
健康的な人の腕を鉛筆と例えるなら、エリザさんの腕はシャープ芯だ。無理だ。私を抱えさせるとか無理だ。エリザさんの腕が折れる。
やめてよして当たらないで私の嫌な予感!
地面でいいから!地面に下ろしてくれればいいからそれだけはやめて!!
神仏に縋って拝み倒した私の細やかな願い事は聞き入れられる事はなく、私はエリザさんの腕の中に移動させられました。
「さつき様は羽のように軽くていらっしゃいますのね……」
さすがは天女様です。とうっとりしてるエリザさんは、私をお姫様抱っこしてるのにちっとも揺らがない。力んでる様子もない。
エリザさんって見掛けによらず怪力さんなの?長袖メイド服に隠れて見えないけど、その下はもしかして筋骨隆々だったりしちゃうの?
私が戸惑ってる一方で、ルーグさんがショーケースの中の発光書物を取り出しで持ってきた。
「やはり私には読めませんね……。どうですか、さつき様?天女のあなたなら、あるいは……」
期待に満ちた目で聖書の表紙を見せられる。本自体が光ってるから灯りが遠くても文字を認識するのには困らない。
………………って、あれ?
「……読める」
見えるって意味じゃなくて、文が読める。理解できる。
だってこれ英語だもん!
よっしゃ勝った!何にかはわかんないけどなんか勝った!手がかりゲット!!
ふふん、伊達につい最近まで必死こいて受験勉強してたわけじゃないんだからね!
おおっ!というルーグさんとエリザさんの歓声をBGMにして、私は見てなさいと調子に乗ってタイトルに目を通した。
えーと、この日本語訳は……
「“異世界取扱説明書”?」
…………え?




