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宝物庫の中はやっぱり広くて、あと防犯対策で窓が無いのか暗かった。
メイドさんがランタンを用意して、灯りが確保できたのを確認して扉がまた閉じられる。身の回りの安全を確保するために隣に並んだメイドさんを見て、持ってるランタンが火じゃない何かで明かりを放出してることがわかった。
火みたいに揺らめいたりしないし、動いて揺れるたびに硬い物同士がぶつかり合うような音がしてる。きっとこの世界特有の物なんだろうな。
壁の大部分は棚が埋め尽くしてる。想像と違うのは、棚がないところには甲冑が並んでたり、剣や槍が並べられてたりしてるってところ。宝物庫って言ってもただ単に煌びやかってわけじゃないらしい。
棚には美術品とかもあったけど、多分貴重な物なんだろうね、干した植物とかも置いてあって、ちょっと不釣合いだった。
私は珍しい物ばかりに目を取られていくのに、ルーグさんもメイドさんも、変わらずに奥へ奥へと進んでいく。
その先で現れたのはショーケースに入れられた、ほんのりと発光している一冊の本。
ああ、あれが聖書なんだな。薄暗いからこそよくわかる。本当に光ってる。文字じゃなくて、本全体が。
……………蛍光イエローに。
「なんと神々しい……」
思わずといった風に嘆息したルーグさんに私は耳を疑った。
神々しい?蛍光イエローが!?
この世界の感性は本当に私のものとかけ離れていて辛い。あんな自己主張の激しい蛍光イエローを神々しいなんて言う人がいるとは思わなかったよ。




