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「だからというわけではありませんが、私にはさつき様がとても美しく見えます。自分に自信の無いというところも、謙虚で大変可愛らしい」
謙虚でもなんでもない、言う前に顔が一気に赤くなる。胸元から覗き込まれて、改めて顔の近さにも気づいてしまった。綺麗な青い目がすぐ近くにあって、蕩けそうな甘い笑顔があって。
「あ、っの、ルーグさん!かぉっ、顔近すぎ……っ」
お願い離して心臓爆発しそう!
身動き取れなくて俯くしかない私を、おやおやとルーグさんが笑う。小さく吹き出した息が耳元を掠めて耳まで熱くなった。恨みがましく睨みつけてみせても、またにっこりと微笑まれて呆気なく敗北。
くそぅ、このイケメンめ!残念のくせにぃっ!
悔しがる私に、ルーグさんはなおも笑う。
「本当に、可愛らしくて………」
その先の言葉は、駆け寄ってきたメイドさんの声で聞こえなかった。
「失礼致します、旦那様。少々よろしいでしょうか?お耳に入れたいことが……」
駆け寄って来たメイドさんは一礼してからルーグさんを見て、ついで言い辛そうに私を見た。
私は部外者だから、込み入った話には邪魔なんだろうな。
あからさまに見られてるわけじゃないけど、居心地悪いし恥ずかしい。
華やかな顔立ちが多いっていうルーグさんの説明は嘘ではないみたい。このメイドさんもすっごく美人さん。
ワインレッドの長い髪をピッシリとしたポニーテールにして、目もルビーみたいに赤い。髪と目に合わせてるのか口紅も赤。それがモノトーンのメイド服に映えて綺麗。
こういう人をクールビューティーっていうのかな。ぼーっとしてたらルーグさんは、「このままで構いません。何事ですか?」とメイドさんに報告を促した。
構おうよ。私部外者。第三者。
突っ込もうとしたけどすぐに飲み込んだ。メイドさんを見るルーグさんの目が、すごく厳しいものだったから。
仕事のスイッチが入ったって言うのかな、一部の隙もない、って感じ。きっと何を言われてもすぐに決断を下せるように、集中してるんだと思う。
なんだ、かっこいいとこもあるんじゃん。
真面目な彼の一面を見て、思わず見惚れた。




