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異世界で恋に落ちました  作者: 藤野
第十六話
129/134

5

 手紙が届くまで馬で半日。手紙はとっくに届いているはずだけど、もし動いて貰えるとしても早くて二、三日はかかるだろうとルトヴィアスさんたちは言っていた。

 十日という猶予の中では無視できない待機時間だ。その間何もしないなんて時間の無駄はできない。だから、私たちはとにかく情報を集めることにした。

 昨日の時点で集まった情報によると、暴動支援者の数は百人を超えることがわかった。武器も全員に行き渡る程度にはあるようで、余程長い間計画を練っていたのだとわかる。「短気を起こさなくてよかった」とはバルトさんの言だ。

 百人もの人が、グランの為だと言って集まった。それだけなら凄いと感心できたのに、その人達は本人の意思など聞きもしないで行動を起こそうとしている。馬鹿な奴らだと、リヴィアさんが悲しげな表情をしていた。

 自警団だという人達は皆、本当にグランを慕っている。だからこそ、気持ちがわかってしまう。

 きっと、違いはあんまりないんだと思う。誰も彼も、グランの役に立ちたいと願ってるだけで。


 「サツキちゃん、注文いいかい?」


 呼びかけられて、はっと我に返った。振り向くと、手を挙げる人がひとり。--あの人は、坑夫ではない。常連と化した、暴動支援者だ。

 メモ帳を手に傍まで行くと、テーブルにはあと三人座っていた。どうやら遅めのランチらしい。お酒はどうするかと聞くと、うーんと考えるそぶりを見せられた。


 「飲みてぇのはヤマヤマなんだがなぁ」

 「この後もキツい仕事が待ってんだよ」


 どうやらお酒はまた今度、らしい。飲みたいとぼやく彼らに曖昧に笑う。お酒飲むとお喋りになってくれて楽なのに。


 「お仕事、そんなに大変なんですか?」

 「おうよ。聞いてくれるかい?  上の奴が、とにかく鬼でよぉ」

 「おいおい、聞かれたら余計扱かれるぞ」


 呆れたように言うけれど、否定はしないあたり本当のことなんだろう。とにかく疲れる、慣れない獲物は持つもんじゃない、そんなことを零された。

 仕事…………暴動に向けての訓練でもしているのかな。ただでさえ多いのに、余計厄介だと内心で舌打ちする。

 やれやれとああだこうだ愚痴を言う彼らに、もっと聞き出したいのをぐっとこらえて愛想笑いを浮かべた。何も知らない、飲食店の従業員として。


 「でも、たくさん動いた後のご飯、美味しいでしょう?  おかげで繁盛させて貰ってます」

 「違いねぇな!」


 豪快に笑われれば、愚痴話も終了だ。さっさとアネッサさんに注文を通して、あちこちホールを動き回る。

 夕暮れには、ルトヴィアスさんが迎えに来る。そしたら、バルトさんのお店で報告会だ。

 それまでの残り数時間をずっと、もどかしい気持ちで動き回った。

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