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働いて、少しは成長したつもりだった。でも所詮、つもりでしかなかったんだと思い知らされる。
俯く私に、大丈夫かと気遣わしげな声がかかる。…………ちょっと、大丈夫じゃないかも。
でもそんなことを言えるはずもなくて、私は顔を上げて、びっくりしただけだと言い切った。声が少し震えたのには、どうか気づかないでほしい。
「私なんかより、これからどうするんですか」
見回した人達は、みんな厳しい顔をしていた。
十日なんてあっという間だ。今から迎え撃つには時間が足りないことは私にもわかる。
だからこそ、時間を無駄にはできない。迎え撃つことはできなくても、何か他に手を考えないと。
「奴らはレオハルト領のためと言っていた。十日後という予定からも国王陛下を狙うに違いない」
「? 十日後に何かあるんですか?」
「忘れたのかい? 毎年国王陛下が飛竜に騎獣して国を一周してるじゃないか」
「えっ、あっ……あー!も、もうそんな時期でしたっけ!?」
さも当たり前のように言われて慌てて誤魔化すと、最近忙しかったからなとルトヴィアスさんが苦く笑った。他の人たちもそれで納得してくれたみたいだけど、心臓はバクバクだ。
というか、ルーグさんそんなことしてたんですね……。
「でもあの人たち、伯爵に天女を献上するって言ってたんですよ?」
空を駆けて国中を巡る----それは確かに狙いやすそうだけど、それがどう天女と関係する?
だって、天女はここにいる。それを知っているのは私だけとはいえ、ルーグさんを狙ったところで何の意味があるの?
「……まず、国王陛下に妻子はおられない。もしこのまま空位になれば、必然的に伯爵様が即位なさる」
そうなると、国王の庇護下にある天女はグランの庇護下にいくことになる。
それって厄介事が増えるだけじゃないかと思っていると、問題はその次だった。
「天女様は一度伯爵様に窮地を救われたと聞く。それを縁に、良き仲になる可能性もあるだろう」
ねーーよっっ!!
全力で叫びたいのを堪えた私を、誰か褒めて欲しい。切実に。すっかり忘れてたけど、そういえばありましたね、天女の迷信。テロリスト達はそれを信じちゃってるのか。
そう考えると確かに、誘拐とテロに分かれてことを起こすより簡単そうだ。理解したところで胸糞悪いことには変わりないけど!
馬で駆けても半月はかかるカルヴァン領に密告しようなんてことは土台無理な話だ。
なら、このレオハルト領でなんとかするしかない。
「自警団って何人くらいなんですか?」
「ここにいる面子も合わせて二十人ほどだ。だが、みんながみんな荒事に慣れてるわけじゃない」
ルトヴィアスさんの言葉に被せるように、リディアさんが拳を鳴らす。にっこり笑顔で凄まれて、言わんとしていることを察した。怖いです、お姐様。
今から人を集めてはという意見も上がったけど、相手に感付かれる可能性の方が高いと早々に却下された。
式典が恒例行事ということは、警備も厳重なはず。それなのに狙うなら、相手はよほどの人数を集めたってことだ。
二十人では、到底太刀打ちできない。




