2
ルトヴィアスさんの家に帰った後、一緒に料理しながらその日あったことを話すのが最近の日課になった。
といっても、話すのはほとんど私で、ルトヴィアスさんは聞き役に徹してくれる。
今日の話題はもちろん、お客さんに貰った石のことだ。不思議な色味だからと実物を手渡すと、ルトヴィアスさんも綺麗だと目を細めた。
「裸石ではもったいないな。このくらいの大きさなら……ちょうど二つあるし、イヤリングにしたらどうだ」
金具もあるからつくれるぞ、と言われて、遠慮なんて忘れてテンションが上がった。
ぱっと目を輝かせた私を見て、ルトヴィアスさんが了解と笑う。さすがイケメン、心遣いまでばっちりだ。
「鉱夫で思い出したんだが、最近変なこととかなかったか?」
「変なこと……?」
なんだろう、スリとか食い逃げとかかな?
すぐに思い浮かんだのはそのくらいだが、そんなことをわざわざルトヴィアスさんが気にするとは思えない。
危ないにおいがして、じっとルトヴィアスさんを見る。彼は困ったような、でも真剣な表情をしていた。
「なんだか変な噂を聞いてな……何にもないならいいんだ、忘れてくれ」
そういって、ジャッ!と勢いよくフライパンを煽る。この話は終わりのようだ。
でもそれは一方的なものだから、私の中には疑問というか不安というか……よくわからないけど、そんなような何かが腑に落ちない。
不意に、スプーンが口の中に突っ込まれた。ん、たまねぎ甘い。
見上げると、胸のもやもやが顔にも出てたのか、ルトヴィアスさんが苦く笑っていた。
「もう少し調べてみるから、今は聞かないでくれ。根も葉もない噂かもしれないから」
さっきと結果は変わらない。でも、今度は納得でした。
きっとですよ? と念押しすると、ルトヴィアスさんは鷹揚に笑って頷いてくれた。
そういえば、ルトヴィアスさんはいろんなことを知っている。日常的なことはもちろんだけど、隣領地の情報とかもどこからか仕入れてくる。
「ルトヴィアスさんの情報網ってどうってるんですか?」
率直に尋ねてみる。
ルトヴィアスさんは一度だけ瞬きして。それからにんまりと唇に弧を描いた。
「知りたいか?」
あ、これ、私知ってる。ルーグさんとか、ローザさんとかがたまにしてた。教える気なんてないのに敢えて聞いてきてる時の顔だ。
「意地悪ぅい」
ジト目で見上げると、ばれたかと笑われた。ちくしょう、これがギャップ萌えってやつなのか……!
勝負に勝って試合に負けた、だっけ。そんな心地がした、今日の夜のこと。




