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「あのですね、ルーグさん。ルーグさんが親切で優しい人だってことはよくわかりました」
親切じゃなきゃ、いくら彼ら曰く聖域からやってきたとはいえ見ず知らずの私なんて助けて面倒までみないと思うし、どこにでもいる取り柄のない私をこうも褒めてくれる優しさも、恥ずかしいけどやっぱり嬉しい。
でもね、物事には限度っていうものがあると思うんだ。
ルーグさんみたいに美人さんでもない特別可愛いわけでもない、ごくごく普通の私を、どうしてあたかも絶世の美貌の持ち主のように褒めそやすのか。適度であれば嬉しいで終わるものも、度を越したら逆に虚しくなるんだよ。
「自分がわかってるからこそ、余計に辛くなる……」
もっと綺麗になりたい、もっと可愛くなりたい。女の子なら誰しも思ったことがあるだろう願いを、私も思ってるから。
「……さつき様は、自信が無いのですね」
「え?」
抱きかかえられたまま、ぎゅうって抱きしめられる。胸元が少し開いたネグリジェだから、ルーグさんの吐く息が直接かかってどうしようもない羞恥心に駆られる。
「さつき様は、すごく美しい方です。それに、可愛らしい。
あなたがご自分を普通だと仰るのは、自信が無いからでしょう。それか、美意識の食い違いです」
「食い、違い……?」
「ええ。例えば、あなたは私を美人だと言ってくださいますが、この世界においては私のような顔こそ一般的、普通と評価されます」
この世界には、華やかな顔立ちの人がそれこそ星の数いる。だからこそ控えめな顔立ちを美と認識するらしい。華やかな顔がありふれすぎていて それが当たり前だからこそ、控えめな顔立ちが際立って美しく見えるのだとか。
それはそれで失礼な気がするけど、美人は三日で飽きるとかって言うし、だからこその美醜の価値観なんだろう。
なんとも罰当たりなものだ。




