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異世界で恋に落ちました  作者: 藤野
第十四話
116/134

5

「いやでも……ルトヴィアスさん、参考までにお聞きしますが、羽借ってお値段の相場は……」


 レンタカーの異世界版なわけだから、もしかしたら結構リーズナブルだったり……


 「あー……まあ、生活費一月分はかかる、かな?」

 「そんなに!?」


 全然お手頃なんかじゃない!高いよそれ!

 あまりの予想外に大きな声を出した私に、ルトヴィアスさんはどこでもこんなもんだと苦笑いする。

 そんな高いお金出して借りるのはどんな人かと尋ねると、やっぱり富裕層が多いらしいことがわかった。ちなみに、騎獣できる人もその辺りが多いのだとか。


 「そんながめついことしてて、もこが『小金』稼ぎですか…」

 「そりゃあ、仕方ないさ。生き物なんだから病気や怪我もするし、当然死ぬ。死んだらまた新しいのを買わなきゃいけないのだから、差し引いたら利益なんてほとんどないだろうよ」


 ルトヴィアスさんの言うことはもっともなのだけれど、はいそうですねとは同意できない。アルバイトしてレンタル料借りようとか目論んでたスイーツ思考の私が悪いとはわかっているんだけども。

 羽借利用の道はさらに遠のいた。どうにか、なんか手段は無いかなぁ。

 ぺったりカウンターテーブルに頬を引っ付ける私の目の前にコトンと小ぶりのボウルが置かれる。

 置いたのは言わずもがな、ルトヴィアスさん。


 「腹が減ると、悪い方にばかり考える。夕飯はもうしばらく先になるだろうから、先にそれでも食べるといい」

 「あ、ありがとうございます……」


 うぅ、気を遣わせてしまった……。

 負い目を感じながら、せっかくのご好意に手をつける。ザクザクのシリアルと細かく刻んだドライフルーツの入ったそれは、ヨーグルトの水分を吸って食べやすい食感だった。

 その中に、馴染みのある味をみつけた。まさかとは思う。でも、この美味しいけれど地球にはない独特の味と食感は、……間違いない!


 「………ここ、レオハルト領なんでしたっけ…」

 「ああ。それが?」


 何を今更と言わんばかりの美貌に見つめられて、私は乾いた声で笑うので精一杯だった。

 またしても、目玉もどきに遭遇す。

 川柳なのか俳句なのかわからない一句を内心で詠んで、ぎごちなくなりながらもシリアルを口に入れた。

 大丈夫、大丈夫。ショコラの時と同じだ。原形止めてないし、美容にもいいって言ってたし。イケるイケる。


 「どう?結構イケるだろう?」


 ふふん、と自慢げに尋ねられて。私は顔がひきつるのを必死に堪え、笑顔で頷いた。

 いや、味は確かにいいんだよ。味は………。

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