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「………と、こんな感じですかね」
ルーグさんが分厚い本を閉じて、わかりました?と聞いてくる。
私が目を覚ました部屋ーールーグさんの執務室から移動して、現在はヴァルガン伯爵家資料室。この国の地図らしい立体模型を前に聞かされた建国逸話に私は諦めた。
何をかって?理解することを、だよ。
酷すぎる筋肉痛で身動きの取れない私は、あの後ルーグさんに抱きかかえられて屋敷内を移動した。人生初のお姫様抱っこに恥ずかしいやら何やらで穴があったら入りたいと本気で思ったが、聞いたところによると、私が眠り続けてた3日間、お風呂などはすべてお屋敷の使用人さんたちが本当に手取り足取りやってくれたらしい。
どうりで身綺麗なわけだと思ったが、それはつまり、あらぬ所まですべて……、ということで。
それに比べたら現状って全然恥ずかしくないかな、って。まぁ結局は恥ずかしいんだけどね。
ルーグさんは細い見た目に反して力があって、デブではないけどそれなりに重さのある私を軽々持ち上げて、それはもう平然と歩いた。近くなった顔に何故か嬉しそうな笑顔が浮かんでて、どうしてかと思ったけど、答えはまぁ、お察しの通り。
「ああ、天女をこの腕に抱けるとは至福の極みっ!このまま一生あなたを抱いて暮らしたい……!!」
そう、ルーグさん節が炸裂しました。
「やめてください恥ずかしい」
ていうか本当は今の状況もお断りしたいんですからね、できないことは言わないけど!
思ったことをそのまま素直にいえば、金だらいが落ちてきたみたいにガンッてショック受けてた。何がそんなに衝撃だったのかわからない。
「そんな……お願いです、さつき様……どうか私を拒まないで……」
あなたに捨てられたら私は生きていけません。なんて口走るこの人が、本当にわからない。
誰かこの人の取説ください、早急に。




