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異世界で恋に落ちました  作者: 藤野
第十三話
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9

 夜。

 疲れ切った体をベッドの上に放り投げた。アルコールなんて摂取してないのに肌が火照って、寝具のひんやりとした温度が気持ちいい。

 あれから柚月と結局二人で離して食べてと楽しんだ。

 美帆はあれから例の人と連絡先を交換したらしい。ちょっと照れた様子でいい人だったよと報告された。きっと遠からず付き合うことになるんだろう。


 ゆらり、ゆらりと視界がぼやける。頭の中にも靄がかってきていて、眠るんだな、と感覚的にわかった。

 着替えもメイク落としもできていない。けど、抗いがたいほどの強烈な眠気に襲われて、体のチカラが抜けていく。


 (このまま寝たら……)


 もう一度、あちらにいけたりしないかな……。寝て、起きたら世界が変わってた。一回目も、………二回目も。だから、もし三回目があるのなら。


 なんて、そんな都合のいいこと、あるわけないのだけれど。


 ふっと笑ったら、一気に眠気が増した。本格的に眠るらしい。

 もういいや、明日にしよう。そう決めて、観念して目を閉じる。


 ふわふわと宙に浮いているような、波に揺られているような感覚。

 言い知れない心地よさを感じながら、私の意識はぷつりと途絶えた。










 遠くから鳥の囀りが聞こえてくる。春はもう過ぎてしまったけれど、陶酔したくなる微睡み。


 (あー……もう朝か………)


 だんだんと目を覚ました意識に従って、むくりと体を起こす。

 寝る前に思ったような、都合のいいことはやっぱり起こり得なかった。

 起きた私の視界に飛び込んできたものは確かに私の部屋。下からは、途切れ途切れに人の話す声がしている。

 今日は日曜日。大学はない。

 前までの私なら二度寝と洒落込んでいたところだろうけど、生憎そんな気は起きなかった。

 かといって、何か予定があるわけでも、したいことがあるわけでもない。

 どうしようかと思い悩んでいると、本棚に目が止まった。漫画も小説も雑誌も、とにかく本が詰められ並んでいる。規則性はないけれど、どうしてかそれが気に入っていて、動かす気にならない。


 (そうだ、今日は図書館に行こう)


 大学のじゃなくて、地元の、公共の施設。そういえば課題も幾つか出ていたから、ついでにそれもやってしまえばいい。

 意外にも早く決まった今日の予定に、早速持ち物を整える。

 身支度も済ませて一階に下りる。


 「あら、出かけるの?朝ごはんは?」

 「食べてくよー。あと、先におはよう、ね」

 「そうだったわね」


 笑うお母さんがフライパンを動かしてる間にトースターをセットする。

 焼きあがったちょうどいいタイミングでベーコンエッグを置かれて、完成した朝ごはんに思わずお腹がなった。


 「帰りは遅くなるの?」

 「わかんないけど……ん、夕ご飯までには帰るよ」


 そんなことを食べながら話した。

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