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異世界で恋に落ちました  作者: 藤野
第十三話
105/134

5

 どんなに合コンの面子が悪くても、そんなのお店はまるで知らない。慣れ切った対応で渡されたメニューはなかなか目を引くメニューが多くて、それが救いだと思った。

 早くも合コン戦線から離脱した面々は男子陣は完全に度外視して、ほとんど女子会状態。さすがに失礼だとは重々自覚してるけど、あっちはあっちで結構盛り上がってるみたいだしいいよね。


 「さつきは何飲む?」

 「んー…ウーロンかな」

 「え、飲まないの?」

 「だって私まだ未成年だし」

 「あれ、そうだっけ」


 打ち明けると、美帆はそれじゃあ仕方ないか、とあっさりと引き下がってくれた。飲みニケーションだのなんだのって言われるけど、強制するのはやっぱり非常識な人だけなんだろうなってしみじみと思った。ーーら。


 「えー?いーじゃんいーじゃん!今日は無礼講なんだからさぁ!」


 なに、この人。

 さっきまで合コン組と盛り上がってた一人がそんなことを言い出した。

 私と美帆の目が一気に冷ややかになる。

 でもそれに気づいていない彼は、「固いこと言わないで飲んじゃえって」なんてことを言ってくるから、浮上しかけたテンションはまた下がってしまった。


 「ちょっと、その子まだ未成年なんだってば。無理させないで」

 「はあ?誰もアンタには言ってねぇじゃん。それよりさ、キミ、名前なんていうの?」


 待ったをかけてくれた美帆に吐き捨てて、ころっと私に向けてぐいぐい押してくる。

 これは、狙われてるってことでしょうか?

 まさかねぇ、と思いながらも美帆に目配せしたら、嫌な予感は的中したみたい。憐れむ目を向けられた。まじか。

 言うまでもなく、私がこの人とイイ関係になるなんてことはありえない。友達ぞんざいに扱った時点でむしろ敵認定しましたが。


 「そういうつもりないんで。お酒飲まれるなら彼方の方が楽しめると思いますよ。私達飲みませんから」

 「えー、そんなつれないこと言わないでさぁ。あ、そこのオトモダチに気ぃ遣ってるとか?なら二人でばっくれちゃおうよ」


 最大限の優しさでもって丁寧にお断りしても、空気の読めないこの人にはどこ吹く風らしい。

 私が言えたことじゃないけどさ、ちょっとは周りの様子見たらどうなんだろう?もう美帆だけじゃないよ、ドン引きしてるの。さっきまであなたをターゲットにロックオンしてた……ナントカちゃんも「ないわー」って顔してるよ。


 「おいおい、そんなあからさまに抜け駆け宣言すんなよ」


 反応に困るわ、と苦笑いしながら別の人が諌めに入る。発言力のある人なのか、ぶつくさ言いながらも失礼な人が離れた。入れ替わりに美帆がさりげなく私を避難させてくれた。


 「助かったね」

 「うん……。美帆、あんな失礼な人は、気にしちゃだめだよ」

 「わかってるって。あ、でも今の人ならいいかもなぁ」


 空気読めるし、気遣いもできるみたいだし、と印象を良くしたらしい。悩むようにさっきの人を見つめる美帆は、私とか友達に接する時とは少し表情が違った。


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