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図書館の閑散とした雰囲気が好きだと思った。何でだろうと考えたら、その答えにはすぐに行き当たる。ここの空気は、宝物庫に似てる。一度しか入ったことはなかったけど、あれはなかなか忘れられない。だって人生初のお姫様抱っこ体験があったからね。自分よりずっと華奢な人に抱きかかえられる、なんて体験もした。初めて異世界と地球の共通点を見つけたのもあの場所でだった。
思い出しながら、手元の雑誌のページをめくる。格好だけ。一文字も読んでなんていないけど、こうしていれば余分に話しかけられることはないから。
美帆が言うように、周囲には私が大人っぽく映っているらしい。帰ってきてからというもの、良く誰かしらに話しかけられるようになった。
告白、なんてものもされた。
でも、嬉しいとは思えなかった。
異常なほど、私は未練を残している。執着している。
私がこんな風だから、合コンなんて持ちかけられたのかな。彼女なりの心配だったんじゃないかと今気がついた。
「今週末、か……」
行くと言ってしまったから、今更反故にすることもできない。今は気が乗らなくても、行ってみたら案外楽しくなったりするんだろうか。そうして、次に目を向けられるようになるんだろうか。
それはきっと良いことのはずなのに、胸の中がモヤモヤとして晴れることはなかった。
最近はこんなことばっかりだ。もっと楽天的な性格だったはずなのに。時間が経てば経つほど、それから遠ざかっていく。
きっかけがほしいと思った。私がもう一度一歩踏み出せるようになるためのきっかけが。
その結果がどうなるのかはわからないけど、今のままではいたくないから。
今週末。それが、きっかけになってくれればいい。




