12話 立ち上がる時
悪魔界の頂点に君臨する存在、悪魔王。
悪魔王がいる悪魔城に三人の人間が呼び出されていた。
「悪魔界か……。懐かしいな、三年ぶりか」
金髪で後ろ髪を束ねている男性は、悪魔界の紫色の空を見上げ、そう言う。
やがてその三人は悪魔城の門の前にたどり着くと、門番らしき悪魔が三人の人間に聞いた。
「人間だな。何用だ?」
「レアルに呼ばれて来た。レアルのいる部屋まで案内してくれないか?」
サングラスを掛けている男はそう答える。
すると、5人の悪魔の兵が三人を取り囲んで、案内した。
悪魔の兵たちは三人を疑っているのか、鉄の鎧に黒い槍を右手に装備していた。
やがて、レアルの王室の前の廊下にたどり着いた。
兵士は王室の扉をノックする。
コンコン、………。
「どーぞ」
扉の向こうから声が聞こえたことを確認した悪魔の兵士は王室に入り、こう言った。
「失礼します。悪魔王様に呼ばれて来た。という三名の男たちが来ていますが」
「入れてくれ。彼らは信頼できる人間だ」
そう悪魔王は答えると、三人は悪魔王がいる王室に案内された。
「久しぶりだな、レアル」
金髪の男は椅子に腰掛けている悪魔王 レアルを見て言うと、レアルは三人を見て言う。
「よく来てくれたな。マース、黒鳥、漢頭」
そう、金髪で後ろ髪を束ねているのがマースさん。サングラスを掛けているのが村川漢頭。そしてもう一人が黒鳥だ。
レアルは話し続ける。
「今日、お前たちに来てもらったのは討伐してほしい奴らがいるからだ」
「悪い悪魔なら隼人が専門じゃないのか?」
マースさんはそう聞くと、レアルは答える。
「いや、今回任せたいのは悪魔ではない。死神だ」
レアルはすべて説明した。
雪国ホワイトとスフェル国のこと、そしてホワイト国の女王とスフェル国が見た夢のこと、三人は黙ってレアルの話を聞いていた。
説明し終えたレアルは、三人に使命を言い果たす。
「これからお前たちはホワイト国に行き、隼人と江川に加わって共に調査してほしい。また、敵と思われる者は始末しろ」
「わーった。レアルの頼み出しな、断るわけにはいかねぇな」
マースさんはそう答えると、他の二人も同じような反応をした。
黒鳥はマースさんと漢頭に言う。
「じゃあ、出発しましょう!まずはホワイト国に行って、隼人と江川に会わなければ!」
一方、ホワイト国の城では、女王が書斎の本棚から何やら本を探していた。
執事はそんな女王に聞く。
「女王様、何をお探しで?」
「昔、まだ私が小さい頃、お母様が私にいつも読んでくださっていた本です」
「もしかして、あの魔術師のお話の絵本ですか?」
「はい、似ている気がするんです。あの絵本の物語の主人公と、松田隼人さんが……」
「絵のデザインと松田隼人さんがですか?」
「いいえ、デザインだけではなく、あの絵本の化け物を操る力……。それは松田隼人が持っている悪魔の継承では……」
「考えすぎですよ。その物語は実際にある神話を元にして描かれていますが、彼がその物語の主人公なら、今頃生きているはずがないじゃないですか」
「それが、似ているのは彼だけじゃないんです」
「と、言いますと?」
執事は問うと、女王は答える。
「この絵本に出てくる黒い骸骨と、私が夢で見たお母様の予言に出てくる黒い使者が……」
そのころ、俺は目を覚ました。
俺はいつの間にか城の小部屋のベッドの上で寝ていた。
「起きたか隼人」
江川は目を覚ました俺に言うと、俺は左腕を見て言う。
「悪魔の継承が……‼」
「すまない、守れなかった。悪魔の継承は今頃、ゼルが……」
「なんでお前が謝るんだよ。今回のは全部俺が悪いんだ。自分のことも守れないなんて……俺は弱い……」
「じゃあ、強くなるしかなかろう」
急にそう声が聞こえた。
すると、その小部屋に誰かが入ってきた。
「久しいの、小僧」
入って来たのは、見たこともないお爺さんだった。
「……誰?」
「さぁ?」
俺と江川はそう言い合うと、その老人はこう言う。
「忘れたのか?んー、お前と最後に会ったのは、国際ホテルにお前を車で連れて行くとこじゃったが……」
そうだ!
そうだ、そうだ、思い出した!
このお爺さんは狩武との戦いに行く前、俺たちを狩武がいるホテルに案内してくれた人だ!
確か、名前はダガンさんだ!
※詳しくは『悪魔の継承』の80話を参照。
「ダガンさんでしたっけ?」
俺はそう聞くと、そのおじさんは答える。
「お、覚えてくれていたのか!ワシも隅に置いた者じゃないのォ~」
さて、このダガンさんはなぜここにいるのか。そう疑問に思っていると、ダガンさんは俺に言ってくる。
「お前たちを倒したゼル・フォナードという男。おそらく奴は、神話時代でお前とレンが閉ざしたはずの死神界の扉を開くつもりじゃろう」
「なんでレンのことを⁉あの時もなんで狩武のことを知っていたのですか?」
「ワシはすごい人じゃからな。すごいんじゃ」
理由になってねぇ……。
ダガンはさらに言う。
「風神一族の力を持っているゼルを倒すのはなかなか難しいぞ。ワシでも倒せるかはわからないじゅからな。それに、隼人。今のお前は悪魔化しても、精神は隼人のまま。じゃから、戦闘力はケンカで勝ったことのないお前と同じなのじゃ」
「レンはもういないんだよな。それはわかってたつもりだけど……。やっぱ俺にはダメなんだ……。今までずっとレンが……」
俺はそう言っていると、ダガンは俺の胸ぐらを掴み、言う。
「弱音を吐くな!お前は魔術師の生まれ変わりということを忘れるんじゃない!お前には、お前を守っていてくれた者たちがいたはずじゃ!ならお前には守らなければいけない者たちはいないのか!」
「そりゃ……いるさ。守りたいよ、皆を」
「ならレンの力ではなく、自分の力で守れ!自分の拳は自分で動かせ!自分の足は自分で動かせ!そして、お前の父親がくれた自分の眼で、未来を見ろ!」
ダガンはそう言うと、さらに話続けた。
「とは言っても、今のお前ではゼルには到底敵わぬ。ワシがみっちり鍛えてやる!小僧!」
「は、はい!お願いします!」
俺はベッドの上でそう答えた。




