転校生
ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ
時計のアラームが鳴り響く。もぞもぞとふとんの中で何かが動く。
「んー。」
気持ちよさそうに寝ている女の子、花瑓である。
「花瑓、朝よ!起きてー!!遅刻しちゃうってば!」
「うーん。」
花瑓を揺り起こすシルク。
「あっ。学校!?いそがなくちゃ。」
凄まじいスピードで支度をする。顔を洗って、ごはんを食べて… 歯磨きをして。そして鏡を前にして、
「よし!OKっ。いってきまーす!」
家を飛び出した。
「花瑓、昨日はごめんね。」
シルクが鞄の中から顔を出す。
「シルク…私のことはいいのよ、大丈夫だから。それよりシルク、けが大丈夫なの?」
「ええ。」
「よかった。でも無理しちゃだめよ。」
微笑む花瑓。この笑顔に何度救われたことか。そう思いながら鞄の中に顔を引っ込める。
(…にしても昨日、何が起こってたんだろう?)
考えながらいつもと変わらない通学路を歩くのだった。
「花瑓、おっはよー!」
「さち、おはよう。」
明るい髪色でショートカットの女の子、さちこと新山紗知湖である。元気いっぱいに教室に入ってきて花瑓の前の席に着く。
「ねぇねぇ花瑓、今日転校生が来るらしいよ!」
「えっ?」
「いやー、今日職員室で先生に聞いちゃった♡」
と、可愛らしくウインク。
「そっかぁ、さち今日当番だったもんね。」
「イケメンだといいな~。」
と、時田木桜が話に入ってくる。ロングヘアで化粧気のある、なかなかの美少女だ。
「はるちゃんったら。」
「えー、花瑓も実は期待してるんでしょ??」
「もう。はるちゃんじゃないんだから、そんな訳ないでしょ。」
がららららら
「みんな、おはよう。」
ドアを開けて担任の小田之雄が入ってきた。
「えーと、休みはなし、と。あ、そうだ。今日は転校生が来ています。さ、安倍くん入って。」
がららららら、とドアを開けて入ってきたのは整った顔立ちの青年。すらっと背も高く、誰もが認めるイケメンといったところだろう。
「あっ。」
思わず声をあげる花瑓。
(あの人昨日の…??)
「じゃぁ安倍くん、簡単に自己紹介をお願いできるかな。」
「はい、先生。みなさんこんにちは。安倍晴明といいます。よろしくお願いします。」
ぺこり、と頭を垂れる晴明。
「よし、じゃあ席は… おっ、北條の隣空いてるな。はい、そこに決定!それではみんな今日も1日元気にがんばろうな。以上!」
そういって小田は教室をあとにした。
「よろしく。」
と、席に着く晴明。
「…ねえ、あなた昨…」
「え?」
「ううん、何でもない。よろしくね。」
花瑓はそういって目をふせる。
(はあぁ、何となーく何となーく聞けないなぁ)
「ほう…?」
「ああ私?私は北條花瑓っていうの。北條でも花瑓でも好きに呼んで。わかんないことあったら聞いてね。」
「うん。ありがとう。」
にこりと微笑む晴明に少し顔の赤らむ花瑓。その赤らんだ顔を隠すように花瑓は前を向いた。すると、
「はーい、授業はじめるよー。」
と、先生が入ってきた。