運命の出会い
8月も終わり頃の過ごしやすい夜。月明かりに照らされる道を、セーラー服の女の子と子狐が歩いている。
女の子は 北條花瑓という。花瑓はセミロングの髪を横で1つにまとめている。子狐シルクの方は尻尾をゆらゆら揺らしながら歩いている。
「ねぇ、シルク。おばあちゃん元気そうで本当によかったね。風邪引いたっていってたから心配だったけど。」
くるりと振り向く花瑓。
「そうね。でも、すっかり遅くなっちゃったわ。お母さんたち心配してないかしら?」
「大丈夫よ。だってシルクと一緒だし。」
「でも…」
「シルクったら相変わらず心配性ね。私だってもう16よ。高校2年生なのよ。」
そういって花瑓は空を見上げる。
「シルク見て!月がすっごくきれいよ。」
それを聞いて花瑓の肩に飛び乗るシルク。
「…ほんとね。」
花瑓とシルクの姿が月に照らされる。花瑓の大きな瞳がきらきらと輝く。シルクの毛も艶やかな絹のように反射する。
「ん?あれは何かしら?」
(何かが月を横切ったような……気のせいかしら。)
「ねぇ、シルク。今何かが…」
「花瑓危ない!!」
「えっ??」
シルクは花瑓を押し倒す。
「んぎゃぁ!!」
シルクが何かに痛がる。
(確かに何かがいるんだわ。何なの?何が起こっているの?)
「シ、シルク大丈夫?どうしたの?何が起こっているの?」
「ちょっと油断しただけよ。かすり傷だから大丈夫よ。」
そういうもののシルクは元気がない。
「シルクしっかりして!死んじゃだめよ!」
「…花瑓、逃げて!」
「で、でも…でも何から逃げればいいの?私には見えないわ!」
(どうすればいいの?)
「見えなくても、なんとかなるわよね…シルク、絶対守ってあげるからね!」
シルクを抱きかかえ走り出す花瑓。運動が得意なわけではないが足にはそこそこ自信があるのだ。
(絶対逃げ切ってやるんだから。)
走り続ける花瑓。
「あ!うそっ。」
どたっ
石ころにつまづいて転んでしまった。
ぐわしゃんっ
次の瞬間粉々になる石ころ。
(どうしよう。このままじゃ次は…)
そう思って目をつぶる。
すとんっ
何かが降り立つ音。
「はっ。…よし、と。…大丈夫?」
「へ?」
見上げると、着物を着た男の子が手をさしのべている。どうやらあの何かを退治してくれたらしい。
「けが、してない?」
「う、うん。」
手をとって立たせてくれる。
「あの、ありがとう。…あなたは?」
「僕?僕は」
そう続けようとすると、近くにいた犬が首を横にふる。
「今は言えないや。狐ちゃん大丈夫?」
その声が聞こえたのか目を開けるシルク。
「大丈夫そうだね。送ってこうか?」
「ううん、大丈夫。家すぐそこだから。」
「そっか。じゃぁ気をつけてね。」
うん、というように花瑓はうなずいた。
そうして2人はわかれた。