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水中都市の少女の戯言「泳ぐ君を眺めているだけ」  作者:


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登校

それは突然降りかかったことだ。




「雨…か」




近年の異常気象を知らせるニュースばかりがラジオやテレビから聞こえてくる。地上は雨ばかりの異常気象。梅雨でもないのに、湿地帯というわけでもないのに雨が降り続く異常気象。街は海に沈みさらに積み上げようにも、地盤が緩くなった今や意味がない。そんな中で作られた漁船に似た機能をもつシェルター型の住宅街ができた。この施設は、穀物や果実などの農作物のすべてを海水からろ過された軟水を使って育てられている。ろ過の際、稀に引っかかる魚類を解剖研究しては似た物質を化学技術で再現する。そんな魚を食事できるようにと消費者に与えている。実質、実験みたいなものなのだろう。

「魚…また…」




(そのうち、食べ過ぎで人魚姫にでもなるんだろうか。)などと馬鹿げたことだと解っていながら考えてしまう。今日は確か、授業があったはずだ。手短に朝ご飯を済ませて鞄に組み込まれたモニターで時間割を確認する。




「えっと…魚拓と歴史…あ!古典!!!」




歴史は嫌い。魚拓はあまり興味がないけど、シェルター越しに眺める海の中は好き。古典や現代文は大好き。今の生活は違うかけ離れた生活している人たちの思考を知れるし、似た思考をもつ偉人と呼ばれる人たちを知れるから。




「…~♪」




思わず、笑みがこぼれて口ずさんでしまう。学校は区画ごとで服装が異なり、私が住んでいるここは紫のサンゴ礁の紋章がついている。どうやら、もともと暖かな地域だったらしい。(そういえば、最近大きな熱帯魚みたいなのをシェルターの窓越しに見かけたなぁ。あの魚ちゃん、また会えるかな?)などと考えながら制服と呼ばれる装いに着替える。制服と言っても色やシルエットに指定はあれども、それ以外は校章のパッチがあればどんなに着飾っても文句が言われないのが私の通っている区画の学校のいいところだと思う。




「んー…髪型迷う…ってもうこんな時間?! 遅刻しちゃう!!」




急ぎ足で鞄と紫のラインの入った灰色のカーディガンをもって部屋から飛び出す。飛び出した先でゆるふわマッシュボブをした白髪の見知った後姿を見つける。


「あ!! みっちゃん!!おはよぉ」


後姿めがけて駆け寄るとみっちゃんとよばれたその子は振り返って止まってくれる。


「もう、ゆいくん遅いよ。」


「ごめぇめぇえん!!」


土下座する勢いで、その場でしゃがみ込みながら不貞腐れる。


部屋を出たら、幼馴染の子である宮下 響(みやした ひびき)。通称、みっちゃんと並んで歩く。それがいつものルーティンで、毎回私が遅刻するのがセット。




「今日の魚、写真撮った?」


学校までのシェルター通路を歩きながら、ふと思い出したかのようにみっちゃんが言った。私は何もピンと来ないまま、首をかしげてみっちゃんを見る。


「しゃしん…?なんで?」


「あれ、魚拓で使うって言われてなかった?」


「ふぇ?!うそっ?!とってなぃ!!どうしよみっちゃん!!」


苦手な魚拓の課題とか聞いてないよ!!とさらに慌てふためく私をみて、みっちゃんは仕方ないなぁと言いたげに苦笑した。


「もー…一昨日にも撮ってた写真あるから送ったげる。」


「さすが、みっちゃん!持つべきは幼馴染!!」


思わず、みっちゃんの手を取り上下にブンブンして歓喜する。そのまま、みっちゃんの手を握ったまま有無を言わさず学校へ走り出した。

【次章】一時間目、魚拓。

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