episode.4
「僕、が……何かを、してあげた……?」
「うん」
陽光さんは、僕の言葉にこくりと頷いた。
「ねえ、みんな。ボクからで、いいよね?」
「……まあ……いい、わよ? 私は大人だもの」
「不本意だけど、仕方がないね」
「ふんっ、アタシは優しいからな。譲ってやるよ」
「う、うちもっ、別に大丈夫、だよ……っ」
「ふふ~っ、わたしは優しいからぁ~、まあいいわよぉ~。譲ってあげるわぁ~」
「……こと、も、別に、いい、です。でも、次は、こと、です」
「りめもいいよ。でも次は、りめだからね♡」
「……うん、ありがと。じゃあ、ボクから話すね」
そして陽光さんは、ぽつりぽつりと話し始めた。
「入学式の時ね。ボク、お姉ちゃんたちや妹たちも違うところにいて、しかも友達もいなかったから、ひとりぼっちでぽつんと体育館に座ってたんだ。
そしたら、キミが声をかけてくれたの。『ひとり?』って。最初はね、ボクもふてくされて『……ひとりだよ』って言ったの。でも、キミは根気強く声をかけてくれた。それだけで、ボクは寂しさが癒されたんだよ」
「……あ、あぁ……あの子、か……! 思い出した……!」
あぁ、そうだ。
入学式、ひとりでぽつんと座っている陽光さんの表情は、普通だった。平気な顔してた。
でも、僕は寂しそうに見えたんだ。
「……それだけで? って、思うでしょ?」
ふっと、あの眩い向日葵のような笑顔じゃなくて。どこか物憂げな、陰のある笑顔を、陽光さんは浮かべた。
「でもね、恋ってそれだけなんだよ。それだけで、恋しちゃうの」
そして、またあのぱぁっと眩しい笑顔に戻って、陽光さんは打って変わって明るい声を出した。
「次はりめだね! よろしくね、りめ」
「りょーかいでーす! ——檜山せんぱい、ほんとにりめのこと覚えてないのぉ?」
「う……ごめん、覚えてない……」
「まぁいいや、でもねぇ……ひよ姉のこと覚えてたんだから、りめのことだって覚えてるよぉ」
「……そう、かな?」
僕がそう首を傾げると、ふふっと悪戯っぽく艶やかに笑って、莉愛さんは言った。
「りめの命、救ってくれたんだもん」




