(6)
役目が済んだ後は……ゲンナリした気分で、近くに有ったサウナ 兼 安宿に泊まり……気付いた時には昼ごろになってた。
「あ〜……なんか、寝てる間に……その……」
相棒の魔法のライブ中継技師は通信用の魔法の石版を見ながら、そう言っていた。
「あ……俺のもだ……」
俺の石版にも不在着信が山程。
「どうせ、面倒な事になるなら……昼飯食ってからにするかな?」
「これって、昼飯と朝飯のどっちだ?」
そんな事を言いながら娼館街の裏通りを歩いていると……。
「あ……あの……兄弟子……」
「えっ? お前、何で、こんな所に……?」
声の主は……同門の後輩弟子。
たしか、就職先は……「雇われヒーロー」ギルドだった筈だが……。
「『何で、こんな所に』は、こっちのセリフっすよ」
「何が?」
「あれ? そいつら、あんたの知り合い?」
その時、そう声をかけたのは……良く言えば実戦向きの筋肉に覆われた……悪く言えば基本は「芸能興業」である「冒険者」には絶対になれそうにない体型の……女……。
とは言え、1対1なら冒険者ギルド所属の並の男の戦士など秒殺出来そうな感じなのは……俺でも何となく判る。
「は……はい……」
「ああ、そう……ひょっとして、この人らって……?」
「あ……あの……え……えっと……その……」
「あのさ、都合の悪い事なら、さっさと正直に言った方がいいよ……。その方が、後々、傷が少なくて済む」
え……えっと……俺の後輩弟子と……このクソ強そうな女戦士……何の話をしてるんだ?
「は……はい……。あの……兄弟子、まだ、職場は……その……?」
「冒険者ギルドだけど……そ……それが……何か?」
「えっと、ここの娼館街、今朝から冒険者ギルド関係者は立ち入りお断りになった」
「えっ?」
え……え……えっと……何で、何で、何で?
「あたしらは、冒険者ギルド関係者を見付け次第、肉体言語で説得してお帰りいただく為に雇われたんだ」
何て言えば判んないが、体は正直だ。
この筋肉女が言った事を、俺の脳味噌が完全に理解する前に……俺の顎は……カックン。
「と言う訳で、さっさと、この娼館街から出てってくれ。事情を知らなかったんで見逃すけど……」
「うぎゃ〜‼……何しやが……あぎゃ〜ッ‼ 助けて〜ッ‼」
遠くの方から男の悲鳴……。
「今、見せしめでブチのめされてる冒険者が居るみてえだな。『いかにもな冒険者』って感じの奴や、顔が知れてる冒険者から狩られてるから……あんたらみて〜な裏方は当分は無事だろうが……さっさと、ここから出てった方が利口だな」
「あ……あの……な……何で……?」
相棒が……ようやく……肝心な質問をする。
いや、質問って言っても何から訊けば良いかさえ判んないし、自分が何を判ってないかさえ判ってないよ〜な状態なんで……「何で?」以外の質問は事情無理だが……。
「この娼館街一番の高級娼婦を、冒険者ギルドの一番人気のパーティーのリーダーが怒らせちまったらしい。それ以外は良く知らん」
……具体的に何が起きたのかは判らない。いや、想像したくもない。
でも、多分、1つだけ言える。
俺がリーダーにかけた……@#$を元気にする魔法が一因である可能性が……糞無茶苦茶高そ〜だ……。