(5)
鎧を着た状態でも、古代の闘神像のような姿だった。
裸になった今は……99%は「筋肉美」という言葉を形にしたも同然だ。
ただ、一箇所を除いては……。
それは、大きかった。
それは、太かった。
それは、長かった。
ただ、元気だけがなかった。
「良く判んね〜んだが、男ってのは30過ぎたぐらいで、こうなるモノなのか?」
「あ……は……はい、俺も、30過ぎで、こんな感じになっちゃいました。あははは……」
そんな訳あるか。30ぐらいなら、普通は、まだまだ、元気だ。
娼館に呼び出された俺達が通された部屋に居たのは……裸になった脳筋リーダーと、この町で一番人気の高級娼婦。
その超々(中略)々高級娼婦の姐さんは、呆れたような表情で、俺達を見ていた。それに気付いてないのは……阿呆リーダーだけ。
「あ……あの……何で、俺まで……?」
そう訊いたのは、魔法のライブ中継技師。
「俺のが元気になったら、何か、雰囲気出るよ〜な音楽流してもらえるか?」
「は……はい……」
「え……えっと……」
俺は、なけなしの勇気をフル動員して、我ながら「おずおずと」って言葉を音にしたかのような感じで、リーダーに声をかける。
「何だ?」
「さわっていいですか」
「はぁっ?」
「い……いや、ここって、えっと……その……制御が難しい場所なんで、触りながらじゃないと……」
「そんなモノなのか?」
「え……ええ……」
嘘は言ってない。
ここと……あと、心臓も、魔法的に見れば「筋肉」の一種だ。
しかし、どっちも、俺の専門であるバフ魔法的には扱いが難しい。
心臓は「一時的に強化する」事でさえ、ほんのわずかのミスが生命に関わる。
こっちの方は……。
「う……うおおお……久しぶりだ……あははは」
地獄だ。
勃たせるのは良いが……まぁ、その何だな事態にする訳にはいかない。
しかも、持たせなきゃいけない。
町一番の超高級娼婦を買ったら、三こすり半で終りました……なんて事になったら……リーダーは、とんだ赤っ恥をかく事になる。
そうなったら、俺の命が危ない。
「うおおおお〜ッ‼ 最強の男の復活だぁ〜ッ‼」
傍から見ると、男が別の男のナニを手コキして勃たせてやってるようにしか見えない光景だろう……。
そんな……イロイロアレアレな状態の中で……リーダーは歓喜の雄叫びを上げた。
「おい、早く、ムード上げる音楽とか流せッ‼」
「は……はい……」
魔法のライブ中継技師の表情は……完全に地獄を覗いてしまった奴のそれだった。